前回の不適合なアウトプットの事例で真っ先に生じる問題が、被害者の保護者からのクレームです。学校へ通うのは学生さんではありますが、授業料を出しているのは保護者です。授業料を出している以上、学校に適切な環境における最高の教育を期待するのは至極当然です。しかし残念ながら、この極めて当然の期待、ISO9001:2015で言う「利害関係者のニーズ及び期待の理解(Understanding the needs and expectations of interested parties)」が分かっていない人も存在します。ISO9001:2015の最終目標が「顧客満足(customer satisfaction)」であることを理解しておけば、造作もないことなのですが。
是正措置に上げた「先ずは謝罪」というのは、最も基本的かつ効果的な対応策です。これだけで対応が満点というわけではありませんが、とりあえずの合格点は与えることができます。詳細な措置と再発防止策に関しては、追々詰めていきます。この「先ずは」が即座にできなくて、後々ドツボにハマってどうしようもなくなる組織というのは、枚挙に暇がありません。組織が複雑すぎて動きが遅い大企業ほどそうです。学校組織も似たようなものです。
詳細な措置は、FTA (Fault Tree Analysis)とFMEA (Failure Mode and Effect Analysis)を駆使して組み上げていきます。FTAは、不適合の原因を特定し、発生防止対策を検討する手法です。結果(不適合)から遡って、原因を明らかにしていく作業です。起こった過去の事象を取り扱うので、落ち着いて作業できます。
一方、FMEAは、製品やプロセスが持つ潜在的な故障モードを事前に特定し、その影響を評価・分析して対策を講じる手法です。上述の保護者クレームは、これから想定することができます。ただし、FMEAは予想する手法なので、キリがありません。ですからFMEAは、「live document (生きている書類))」とも呼ばれています。常時updateです。
学校という環境は、購買者(保護者)と消費者(学生)が分離している特異な環境です。大多数の消費者相手の変更管理(change control)を無視した「事前の予告なく変更します」的な適当な修正措置でお茶を濁していると、やがてそれ自身を実施すること自体が目的となってきます。日本人の悪い欠点の一つである「手段と目的を履き違える」というやつです。「ま、とりあえず言っておけばいっかー」とね。
FTAとFMEAに基づいた対策がしっかりできていないと、いざ保護者クレームが来たときに、だらしなくかつどうしようもない対応になってしまい、世間からこれ見よがしに叩かれるというわけです。残念!!
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