Tag Archives: 信頼性工学(品質管理)

教育とは何か?

 教育とは何か? 私なりの理解では、

「何人であれ、その者が活きるように導くこと」

だと思います。教育に携わる者はそのプロフェッショナルでなければなりませんし、これが教育者の最大の務めだと思います。

 人を責めるのは簡単です。他人は自分とは違います。責める理由の大部分は、自分との差異が許せないからでしょう。そう、何人でも他人を責めることができます。

 反省ないし再起を促す意味で責めるのは良いとしても、ただ単に自己満足のために責めることは頂けません。信賞必罰は指導の根本ですが、そのバランスにはよくよく注意しなければなりません。

 過失に対してバランスを欠いた過剰な責めには、得るものがありません。「窮鼠猫を噛む」のように、かえって失うものが多くなります。

 つまり、責めるのならば、先々の落とし所を想定して振る舞っているかです。

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Bargain for Communication

 10月になりました。月初めの各社内定式が終わり、また新たな就職活動戦線が始まりました。そして、コミュニケーション能力の大安売りもまた始まりました。Bargain for Communicationです。

 以前にも書きましたが、その勘違いには聞き飽きます。コミュニケーション能力至上主義を、勉強しないことへの免罪符と勘違いする輩も出てくる始末です。OBや先輩からこのような類のことを言われて、真に受けます。真に受けるというよりは、それを免罪符として使ってサボろうする潜在意識の発現です。そのOBや先輩って、本当に自身が人生の理想や目標とすべき人材なのかな?と思います。

 そんな中の毎度の後期、内定式を済ませてあとは卒業を控えるだけの5E学生達に対して、信頼性工学の授業を行っています。コミュニケーション能力の真の意味について説きました。それは、「めんどくさい人を何とかする能力」ということです。

授業スライドの一コマです。
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JEITA責任ある鉱物調達説明会2024

 6/27(木)、題目の「JEITA責任ある鉱物調達説明会2024」が開催されまして、オンラインで参加しました。この説明会は毎年、各企業で紛争鉱物管理業務に携わる人達のための説明会です。電子情報技術産業協会(JEITA)責任ある鉱物調達検討会が主催しています。

 紛争鉱物とは、米国のドット・フランク法より始まった、コンゴ民主共和国ならびにその周辺国の反政府武装勢力への資金源を規制するための法律です。資金源はその地域で豊富に産出される鉱物資源に基づくものが主ということで、そのサプライチェーン上のボトルネックとなる精錬所を管理する仕組みです。対象となっている鉱物資源は、タングステン(Tungsten)・タンタル(Tantalum)・錫(Tin)・金(Gold)の4種類で、英語名の頭文字を取って”3TG”と呼ばれています。本規制は日本ではなくて米国の法律なのですが、各企業が世界展開するにあたり、米国を抜きにしてはできないので、実質上各企業へ義務化されています。

 企業時代に品質管理業務の一環として、この紛争鉱物に携わっていました。有明高専に来てからは、5E後期対象の信頼性工学という科目の中で、この紛争鉱物について教えています。現代の企業活動では最も重要な業務の一つであるので、実業学校の一種である高専においても学生に必要不可欠な知識であると考え、教えています。

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Realもったいないお化け

 続きです。昔、子供向けにもったいないお化けというキャラがありましたね(※対象は食べ物ですけど)。もったいない(Mottainai)という言葉は、以前世界的に話題になったように、こちらも一見批判の余地のない言葉のように思えます。

 しかし、ちょっと考えてみましょう。

 世間には、もったいないということで、何かとモノを溜め込む人がいます。空箱とか袋とかが典型的ですね。理由は、「もし後で使うことがあったら、新たに買うともったいないから」です。

 察しの良い方はお分かりですね。この方、「空間」を無視しています。それらを置く空間は無限ではないですよと。その不確実な予定のために、不確実な期間、もったいないは空間を占有します。目前に映る事象がもったいないと思い込むがために、トータルとしての時空間を無駄にしています。困った方です。

 「後で使うかもしれないから」と声高に言う人が、「実際に使った」ということを見ることはまずありません。いやたぶん、誰も見たことはないでしょう。「後で使う」とは、もう都市伝説です。半永久的に、空間は不法占拠され続けます。

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知性と時間と空間

 節約とは一見、批判の余地のないことのように思えます。

 世間には、目前に映る節約可能な事象に対して、目の色を変える人がいます。これは絶対善だと。さて、本当にそうでしょうか。

 例えば、性能が良くて事後整理など自動で行ってくれるけど印刷コストがちょっとかかる印刷機と、手間はかかるけどコストは安い装置があったとしましょう。件の人は後者を絶対推しします。

 しかし、考えてみましょう。人間にとって、いや、生きとし生けるものにとって、最も大事なものは金銭ではありません。「時間と空間」です。時間は、老若男女貴賤を問わず、常に失われていくものです。相対性理論は時間を含む四次元空間で記述されますが、唯一時間だけは人が制御できません。他方、空間については、宇宙のスケールで考えますとそれは無限ではありますが、人一人が扱える空間は、財力など様々な要因で実に狭いものです。歴史を紐解けば、その空間への欲望は、戦争を引き起こす原因の最たるものです。

 そう、件の人は、時間と空間というコストをまるで無視しています。前者の装置は、具現的な金銭的コストは要しますが、時間と空間のコストは減ります。自動的にやってくれるので、装置に張り付くという空間制限もないからです。その分、別の仕事や休憩に時間を充てることができます。品質管理的に言うと、工数が削減できます。仕事が切り上げられて、その分プライベートを充実させることもできます。

 後者の装置は、たとえ金銭的コストが多少和らいだとしても、逆に工数は増え、担当者は疲弊します。結果的に人件費は増えてしまいます。コストというものは、総合的に考えないとなりません。一つの要素だけで決定できるものではありません。そうでないと、人類は原始時代に戻るしかありません。

 そう、知性のある人、世の中で賢いと言われる人というのは、時間と空間を大切にする人のことです。常に失われていくもの、常に制限がかかるものに対して、最大限効率化を目指します。

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ISO9001:2015と教員活動

 昨夏、財団の報告会である質問をされました。「高専にいて何故研究成果が出せるのですか? 心がけていることは何ですか?」と。一字一句の記憶が定かではありませんが、問われた内容のベクトルは間違っていないと思います。

 とっさに「学生Firstです!!」と答えました。

 企業人、特に製造業に携わる者なら誰もが知るISO9001:2015において第一に求められているのは、「顧客満足」です。これを学校の視点から言うと「学生満足」となります。私は常に、”What is the best for students?”を基点にFMEA (Failure Mode and Effect Analysis)を回しています。

 一方でISO9001:2015は、「利害関係者のニーズ及び期待の理解」も求めています。ここで利害関係者とは、保護者であり、将来学生達を受け入れる社会です。これは、学生満足に対するカウンターパートであり、学生指導へと繋がっていきます。学生指導は、時に学生達へ厳しい形となり得ます。

 「学生満足」と「利害関係者のニーズ及び期待の理解」ががっちり組み合った土台の上に、教員活動が成立すると思っています。ただ世の中を見ると、後者に寄りすぎている感が否めませんね。そうなってしまうと、教員活動のベクトルも自ずとずれていきます。

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コミュニケーション能力を考える

 属人化の排除に続いて、「信頼性工学」ではコミュニケーション能力というものも教授しています。続いて、「おまえが言う?」はナシで(^_^;)

 就活では、コミュニケーション能力を自慢する学生が雨後の竹の子の如く沸いてきます。コミュニケーション能力を、友達作りと勘違いしているかと思います。

 一方、企業活動の根幹はもちろん、ISO9001:2015にも謳っている通り、「顧客満足」です。それは平たく言えば、「完全な製品/サービスをお客様に届ける」ということです。

 しかしながら、社員は皆人間ですから、ミスをします。ミスをしない人間は存在しません。完全な製品を世の中に提供することと、携わる人間が避けられないミスとのギャップをうまく取り持つことが、真のコミュニケーション能力だと思います。

授業スライドの一コマです。
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属人化を考える

 後期は卒業を間近にした5年生に対して、「信頼性工学」という授業を担当しています。言い換えれば「品質管理」の話をしています。

 純学問的にしてしまうと無味乾燥な統計計算ばかりの話になってしまうので、就職を控えた学生さん達には、企業/組織に勤める際への心構え的なことも教えています。ある面では新人研修みたいな感じになっています。あ、「おまえが言う?」は、ナシで(^_^;)

 そんな中で、「属人化の排除」、すなわち「特定の人しかできない仕事を作ってはいけない」という話をしています。広く一般に学生さん達の中には、「企業勤めは社会のネジ/歯車になるのでイヤだ~」と言う人達がいます。そういう意見に対して、「属人化の排除をベースにしないと企業活動は成立しない」ということを説いています。皆さんが求める創造は、その上にこそ成り立つと。

授業スライドの一コマです。
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信頼性工学、始まるよ

 後期が始まりした。5E割り当ての授業「信頼性工学」が始まります。

 この科目、選択科目です。第2/3種電気主任技術者になるための認定用科目ではありません。電気の専門でもありません。さらに卒業間近の5E後期において開講ということは、つまりは重要性の低い科目です。無理に取らなくても卒業できます。

 しかしながらこの科目、私が最も気を遣う科目です。なぜなら、社会へと巣立つ彼らにとって、一番必要で大切な科目と思うからです。事実、卒業生からは最も評価を得ている科目です。

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Nice!! 真空

 みずほ号の真空度が、4.0×10-6 Paを切りました。Nice!! 真空です。

 もちろん、ずーっと引きっぱなしではなく、日々の実験の都度大気開放しての値です。なかなか素敵です。春先にベーキングした効果か、最近真空度は絶好調です。

 奥のかもめ号も10-6 Pa台に突入しました。みずほ号との差に関しては、かもめ号の方が性能が悪いというわけではなく、真空ポンプの組み合わせによる問題かと思います。

 信頼性工学で言うところの「補機(待機冗長系)」の概念に沿った設計と運転をしています。大小の真空ポンプを並列で動かしています。みずほ号よりもかもめ号の方が大小の排気量差が大きく、そのバランスの関係でちょっと悪くなるのかと思います。単独運転にすると良くなりますけど、万が一のトラブルに備えて、補機も運転させています。つまり、待機ではない冗長系ですね。

 いずれにしろ、市販の装置では良くても精々10-5 Pa台に入るか入らないか程度ですから、1桁以上性能が良いです。

手前がみずほ号、奥がかもめ号です。

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ニーバーの祈り

 ふと、最近買った本に付いていたしおりに書いていた言葉が心に留まりました。

「神よ、変えてはならぬものを受け入れる冷静さを、変えるべきものは変える勇気を、そして変えてはならないものと変えるべきものとを見分ける知恵を我に与えたまえ」

です。「ニーバーの祈り」と言われているものだそうで、恥ずかしながら、今まで全く知りませんでした。

 日本社会に総じて言えるのですが、一度決めたものを金科玉条とするきらいがあります。その理念や理屈に現実が合わなくなってきても、絶対に変えようとしない。必然的に生まれてしまうどうしようもない差を埋めるために、無理な解釈や令外の官を作ります。それが貯まってくると、元の理念がもはや意味不明になるどころか、遵法精神が損なわれていきます。

 そしてその損失を補おう、矯正教育させようとして、無理な指導(と自称するもの)が入ります。手段自体が目的化していきます。

 品質管理、品質工学、ひいては人を束ねる上で、失敗を個人の責任に帰すことは御法度です。授業(5E 信頼性工学)でも、学生さん達に口酸っぱく言っているところです。100%の管理や成功を達成したいのなら、システムをそれに見合うように練り上げるしかありません。個人の努力や行動に依存しては、目的達成は絶対に不可能です。なぜなら、人間誰しも完璧ではないからです。不可能なのに、不可能なことを個人の責任にして組織を傷つける人は、残念ながら古今東西珍しくはありません。

 これは、FMEA (Failure Mode and Effect Analysis)がLive documentであることを知っていれば分かることかと思います。

 以上の点から、私は何事も変えたい派なのですが、一方で変えてはならぬものが存在することも事実です。変えること、ひいては合理性を追求することがあらゆる幸せに繋がるかと言えば、断言はできません。

 ニーバーの祈りは、心に深く刺さります。

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