フランジの加工と洗浄

 メカニクス(M)コース実習工場に装置フランジの改造を依頼しました。新しい実験展開のためです。

 加工を終えたフランジが返ってきましたので、早速装置に取り付けることにしました。その前に、洗浄です。フランジを含む真空チャンバーは、一般にステンレス鋼(Steel Use Stainless, SUS)製です。SUSを用いるのは、丈夫さと錆びないこともさることなから、磁性の影響がないのと、ガス吸着による真空劣化が小さいためです。真空を悪くするのは、チャンバー内壁に吸着した水などのガス分子です。

 しかしながら、SUSを加工しようとすると、逆にその硬さのために切削油を併用しなければなりません。当然真空にとって、残って付着(残存吸着)している切削油は邪魔者ですので、加工後は洗浄して除く必要があります。また、加工の際に指紋も付いてしまいます。人間の手汗も真空にとって好ましくありません。というわけで、加工していただいたフランジを研究室で洗浄しました。

 まずは中性洗剤で普通に洗います。ただし、指紋がつくのを避けるために手袋をします。

中性洗剤で洗います。

 続いて、水道水でここも普通にすすぎます。手袋は適宜交換です。ただちょっと気を遣って、浄水器を通しました。

水道水ですすぎます。

 水は表面張力が大きい物質です。表面張力は分子間の引力に基づくもので、目前には水玉を生じます。水玉が残っている、特に細かいところなどに残っていると真空に宜しくないので、熱湯で更にすすぎます。水の表面張力は、温度を上げると下がります。これは、温度が上がると水分子の運動が活発になって、これが引力に打ち勝つからです。熱湯は、卒業生がティータイム用に残していったポットを活用しました。

さすが卒業生です。

 ポットからの熱湯ですすぎます。

熱っっっ!!

 SUSの熱伝導率は金属の中でも悪い方でありますが、でもやはり金属です。熱いものは熱いです。フランジは熱くなってしまいました。

ポットからの熱湯の熱さを我慢して作業です。

 熱さに耐えながら、最後はアルコールで吹き上げます。鷹林研究室では、イソプロピルアルコール(IPA)を使用しています。正式名称は2プロパノールですが、IPAの慣用名の方がよく知られています。メタノールは毒だし、エタノールは酒税がかかるので高いからです。いわゆる化学の共洗いですね。アルコールは水と混和しますので、アルコールを通じて水分を拭き取ります。アルコールは沸点が低く表面張力も小さいので、すぐ蒸発していきます。

熱さに耐えながら、IPAで拭き上げます。鷹林研究室では、赤い印の洗浄瓶はIPAを意味しています。

 無事装置本体に取り付けました。一晩真空度の様子を見たところ、大丈夫そうです。暑さが過ぎたらベーキングもしてみようか。

真空度はOKでした。

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