前回で述べた作業日報は、就職後の日々の日報への練習です。作業日報は、ISO9001:2015の「9.1 監視、測定、分析及び評価」に属するものです。何か不具合が生じたときに、日報や関係する作業記録を調べて、どの時点で生じたを明らかにして、対策、そして再発防止策へと繋げていきます。特に製造/生産部門で生じた場合は、どこまでの製造品がOKで、どこからがNGかを明らかにする必要があります。

　しかしこの作業日報、実は私書いたことがありません。教えておきながらね(^_^;)。いや別にサボっていたわけではなくて、品質部門では特例で免除されていたからです。

　何故免除されていたか?　それは品質スクランブルに備えてです。

　企業において、不具合/不祥事とその外部クレームへの対応は全てに優先します。その対応が遅れたり、稚拙だったりすると、その企業は明日この世から消滅する可能性もあるからです。カネボウや山一証券など、誰もがその名を知っていた大企業が一瞬にしてこの世から消えたことは、そう古い話ではないでしょう。

　前回で述べたように、世の中は所属組織で一括りに判断されます。不具合/不祥事で潰れるような企業に勤めていた人を、好き好んで雇いたいという他企業は少ないと思います。たとえ雇われたとしても、重職には就けないでしょう。

　学校も例外ではないでしょう。少子化で淘汰のご時世です。自分の生活が何によって成り立っているかを知っておかねばです。つまりは、「利害関係者のニーズ及び期待の理解(Understanding the needs and expectations of interested parties)」と「顧客満足(customer satisfaction)」です。

　さて、不具合の情報が一旦入るや、品質部門はスクランブルです。日常業務なんぞ後回しです。作業日報をのんびり書きながら、「ああ、今日も一日頑張ったな～」なんてことはしておられませんから、免除です。トップガンのテーマ(Danger Zone)なんかピッタリの状況ですね。謝罪にドルギランする者、再発防止策を考える者、そのために関係部署に指示を出す者なとなど、総動員体制となります。「今日は家帰れないな・・・」となることも珍しくありません。これに備えて、社内組織をスムーズに動かすために、「品質保証体系図」を日頃から整備しておきます。

　その不具合は、笑われる蟻の一穴かもしれません。しかし歴史を紐解けば、蟻の一穴が巨像を倒した例はいくらでも出てきます。古人曰く、「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ」です。

　品質部門の指示は絶対です。異論があるのなら、より優れた代替案を出せです。出せないのであれば、黙って従えです。強権的ではありますが、全てを守るためです。知恵と覚悟を共に備えた者にのみ務まる仕事です。品質部門は最優秀でなければなりません。

　品質から見れば一般に花形と捉えられる開発部門は自己満足のわがままな集団であり、開発から見れば品質は何かと細かくうるさい目の上のタンコブです。企業は仲良し集団であってはいけません。企業とは、それぞれのprofessionalが集まった経済活動集団です。仲違いする必要は全くありませんが、傷を舐め合うようでは明日消滅します。バランスが難しいところです。

　世の中でリコールの話が出ます。自動車関係が有名ですね。一般の人々は「何してんだ!!」と怒りをあらわにするでしょうが、品質を知っている人達からは、「あーあ、彼ら家帰れないな」と同情の念が出てくることでしょう。自分達自身のミスでなく社内他者のミスであっても、全てを負う立場ですから。

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