このお盆休み期間中に装置メンテナンスの一環として、油回転(ロータリー)ポンプのオイル交換を行いました。ロータリーポンプ(rotary pump, RP)は、オイルにより機密性を高めることで気体を圧縮して排気する真空ポンプです。
RPが引ける真空は100 (10+2) Pa弱と低くはなく、そしてオイルによる汚れも懸念されますが、ターボ分子ポンプ(turbo molecular pump, TMP)などの高真空ポンプの背圧ポンプとして欠かせない装置です。TMPは単独で動かすことができません。必ず排気側にRPもしくはそれと同等性能のドライポンプ(dry pump, DP)をつける必要があります。
最近はDPの性能向上が著しく、RPに取って代わる勢いです。しかしながらまだ価格が高いので、鷹林研究室ではRPを使用しています。
RPのオイルはもちろん経年劣化します。車と同じように定期交換が必要です。車ほど厳密ではありませんが、1年毎の交換が良いですね。
鷹林研究室には、光電子制御プラズマ装置1台につき2台、計4台のRPがあります。各RPは約30 kgと重く、オイル交換は結構な重労働となります。腰で踏ん張ると腰を痛めるので、足の裏で踏ん張るように気をつけました。若い学生さん達に手伝ってもらったら良かったのですが、一息つけるお盆休み中にのんびりと独りで行うことにしました。
まずはそこのドレイン栓を外して、現行の汚れたオイルを抜きます。1年経っていますから、変色していますね。
十分抜いて再び栓をしたら、新しいオイルを入れます。こちらは無色透明ですね。
加えて、フォアライントラップのメンテナンスも行いました。RPは動作中火傷するくらい熱いです。オイルが蒸発して真空装置側に逆流することがあります。逆流すると当然真空装置は汚れます。オイル汚れは洗浄がやっかいですので、RP吸気側にフォアライントラップという逆流防止装置を付けます。フォアライントラップの中身は活性アルミナ(activated alumina)で、逆流しようとするオイルを吸着します。フォアライントラップのメンテナンスとは、活性アルミナの交換になります。1年経つと、活性アルミナも同じように変色します。新しい真っ白なものに入れ換えます。
最後に、再組み立てして装置を再起動しました。そして周囲の汚れはn-ヘキサンで拭き掃除しました。油汚れは油で掃除です。n-ヘキサンは化学でグリスの拭き取りに使っていますね。沸点は低いので、すぐ揮発します。気になるようであれば、イソプロピルアルコール(IPA)→水で次第に親水性しながら拭いていきます。まあ、化学者ですから。
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