前回の続きです。ベーキングが無事終わり、PA-PECVD装置が組み上がりました。
↓の写真は装置の一部である、イオンゲージ(ionization gauge)です。gaugeとは計器一般を指しますが、ここでは真空計を意味します。イオンゲージは正式には、「B-Aゲージ (Bayard-Alpert hot cathode ionization gauge)」と言います。
真空度(圧力)は真空計で測ります。「そんなん当たり前じゃーん!!」なんではございますが、実は真空度により真空計は複数使い分けなければなりません。と言いますのも、真空計ごとに正しく動作する圧力領域が異なるからです。大気圧(10^+5 Pa)から10^-1 Pa台くらいまでは「ピラニゲージ (pirani gauge)」、10^-1~10^-4 Pa台くらいまでは「ペニングゲージ (penning gauge)」、そして10^-4 Pa台くらいより下は↑のイオンゲージという風にです。今回の装置にも4種類揃っています。えっ? 3つしかないじゃん。ええ、もう一つ、「キャパシタンスマノメータ (capacitance manometer)」という、ペニングゲージとほほ同じ領域ですが、より精密に測定できる真空計を実際の実験条件制御用に備えています。キャパシタンスマノメータという名前は知らない人も多いと思いますが、代表的な商品名「バラトロン (Baratorn)」は有名です。
さてこのイオンゲージ、測定範囲より高い圧力のときにスイッチONすると、フィラメントが焼き切れて壊れてしまいます。フィラメントのスペアは結構高いので、この業界では「怒られる定番ネタ」の一つです。フィラメントは細くて、↑の写真ではピントが合わずに見えにくいですが、手前の高さが異なる2つのカギ(L)型電極の間に垂直に繋がっています。
今回新しく計器をセットアップするに際して、採用した在庫品のは切れていたので、新しく付け替えました。しかしこの作業、細かくて慎重を要するので、結構手間がかかりました。
・・・そんなこんなで完成しました。アルゴン(Ar)ガスを入れてテスト放電させてみました。アルコンでは安全で、最も放電させやすいガスです。
↑に示すように、綺麗なグロー放電プラズマが現れましたね。
でもこれ、「失敗」なのです。我々のPA-PECVDの特長は何と言っても、「放電させたい場所にだけ放電させられる」ということです。これ、変なところに放電しちゃいました。業界用語で言う、「放電癖」がついています。
一般に放電はブワーッと広がっていきますから、定量評価が難しいです。PA-PECVDは放電箇所を限定できますので、定量評価が可能です。そうなると、まあ、色んなことが分かってくるわけですね。
放電失敗の原因はたぶん、電極配線です。実験研究とは、なかなかうまく行かないものです。綺麗にまとめられた教科書に目を向けているばかりでは、ダメですよ。
しかし今回は出張リミットが来ましたので、改善案を議論して、次の機会に修正することにしました。
次は有明の学生さんと一緒に行きたいなー。
Auf Wiedersehen!!
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