自由をこなす力と卒業研究

 学生さん達は、夏休み中です。教員って夏休みはヒマなんですかって? いえいえ、と~~んでもございません。むしろ、より忙しいほどです。夏休みの期間は、開講期間にできなかった研究を進めたり、次期の授業準備をしたりと、もう大忙しです。ねこねこ55の手も借りたいです。

 突然ですが、私、博士です。「士」とか「師」とかつく職業の人、つまり士/師族の一人です。略して「S族」にしましょう。S族には、博士、弁護士、司法書士、会計士、医師、歯科医師などなど、色々ありますね。これらS族に共通する能力は何か分かりますか?

 専門知識? それもありますが、もっと大事なものがあります。

 それは、「自由をこなす力」です。

 自由な時間を如何に有効に運用できるか、使いこなせるか、です。S族は、人に指示する立場であって、指示される立場ではありません。ということは、自らを律して自らを管理することが求められます。無論、指示することに驕るというのは、論外ですね。

 S族は、世間からそれぞれの分野でのリーダーシップを求められます。大学院生時代に、恩師によくよく教えられました。「判断し、決断し、実行する力」を求められます。その分、自由な時間裁量が許されています。

 その自由時間を如何に有効に消費できるかが、これら職業の人達のランキングに繫がるでしょう。

 自由を使いこなせない人は、S族を名乗る資格はありません。

 私は自身を忙しくすることもできれば、ヒマにすることもできます。ただし、怠ったツケは自分で償わなければなりません。S族は、生み出す結果が全てで、自己責任です。

 そうはいっても、何かと管理される事務仕事は降ってきます。お役所だなあと。民間企業では、お客様との時間を大切にするために、社内の効率化に不断に挑みます。全ては顧客満足(customer satisfaction)のために。下衆な言い方をすると金儲けのためですが、人様に喜んでもらえることをするのは結構嬉しいものですよ。

 人を管理することで、仕事をした気になる人達がいます。まあ世の中の管理職とはそういうものではあるのですが。

 でもね、ここに世の中の大きな矛盾があると思います。S族に限らず広く一般に、人に素晴らしい仕事をしてもらおうと思うと、その人に自由を与えなければなりません。しかし管理職にとって、部下の自由は不安を煽ります。かといって、不自由は決して成果を与えません。

 受ける側もそう。なんかよく分からない事務仕事をこなしても、仕事をしたことにはなりません。本職で言いますと、授業で学生さん達と向き合い、研究で自然と向き合ってこそ、仕事をしたことになります。

 指示を的確にこなすということも大切な能力の一つではありますが、それは仕事をしていると言うよりは、仕事をさせられているということです。

 仕事をさせられている、悪く言えば他人に踊らされているのに、さも偉そうにGo-Go!!する人は好きではありません。世の中、割といますね。特に大企業に多いかな。させられているということは、責任を他人に転嫁していることに通じますから。

 判断・決断・実行するための力は、時給換算できるものではありません。何時間従事したからといっても、正しい行動ができるとは限りません。ボーッとしてても、脳みそは24時間営業です。Bestな力は発揮できないかもしれないが、せめてBetterと呼ばれるために、考えて、考えて抜いて。

 さて↑を踏まえて、学生さん達の卒業研究を考えます。卒業研究では、基本は教えますが、あまり事細かな指示はしないようにしています。高専生のポテンシャルは高く、知識もあります。しかし後者は、勉強させられたことで得たものが大きいです。

 高専卒の人で足りないなあと感じるのは、そこ。大学生は遊んでいると言われますが、それは一面的な話。大学では、低学年時に敢えて自由を与えることで、自らの生きる道を探させる。自由というものをどのように扱ったら良いかを考えさせる。楽しく遊ぼうと思ったら、頭を使わなくてはなりませんよ。遊ぶのであり、遊ばれるのではないのですから。

 人生に、このような時間は必要だと思います。

 高専は低学年時から専門教育を先取りしているので、見た目の学力では大学生に負けはしません。しかしそれは、指示されて詰め込まれた知識でしかありません。自分で自由に使いこなせてこその、真の力です。テストで良い点を取るのは、ただバカでない証明だけであり、賢いという証明にはなり得ません。

 卒業研究ではこれまでと全く違って、自らじっくりと考えて欲しいと思います。細かな指示は、返ってその人の個性を潰すことにもなりかねませんし、重要な発見や成果を見逃すことにもなりかねません。

 リーダーシップを預かる人は、その行動如何で周囲を幸福にも不幸にします。「学生がダメで・・・」と言いながら教壇に立つ人、世の中にわりといますね。いえいえ一番ダメなのは、アナタですよ。そんなアナタと少なからず時間を共有させられた学生さん達は、不幸でしかありません。かくいう私も、大樹の苗木を小さいと馬鹿にする愚は犯したくはないところです。

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