プラズマCVD装置組み立て中

 有明はまだ雨が続きますね。そんな中、私はただいま東北大学@宮城県仙台市にて、プラズマCVD (plasma-enhanced chemical vapor deposition, プラズマ化学気相成長法)装置を組み立てています。↓の写真がその装置で、昨日組み上がりました(※正確には、組み上がる直前の写真)。

 中央のチャンバー内に基板を入れて、内部を真空にし、その後適当なガスを適当な圧力分入れます。そして放電させてプラズマを生成します。プラズマ中でガス分子は分解されます。分解されたガス分子は基板上に堆積して、膜を形成します。

 作っている装置は、「光電子制御プラズマCVD (PA-PECVD)」というプラズマCVDの一種で、オリジナル装置です。これでダイヤモンドライクカーボン(DLC)という炭素膜をつくって、その物性を評価する研究を行っています。

 電気に何の関係があるかって? プラズマは、高電圧放電の応用の一つです。また作られるDLC膜は誘電体材料であります。DLCは、ハードディスクや金型の表面コーティング材など、既に幅広く用いられている材料です。私はDLCの誘電性に着目して、まあ、いろいろやってきたわけです。

 電気だけでなく、物理や化学の知識も要ります。色々勉強できますし、多方面に顔も利くようになりますので、研究内容を気に入ってはいます。

 さて組み立て後の本日は、「ベーキング (baking)」という処理をしています。↓の写真です。

 2つの写真の違いが分かりますか? なにやらアルミホイルで本体を覆っていますね。アルミホイルの下にはシーズヒーターやリボンヒーターを巻いています。

 真空装置は、もちろん十分真空に引けないといけません。しかし普通に組み立てた状態では、大気圧(1013 hPa ≈ 10^+5 Pa)から到達できる真空度は、精々10^-5 Pa台です。真空装置は24時間真空排気しっぱなしが原則ですが、どんなに強力な真空ポンプ用いても、真空度はこれより下には下がりません。

 この10桁落ちの真空レベルでも実験はできないことはないですが、不純物を徹底排除したいので、より低い(良い)真空にしています。12桁落ちの10^-7 Pa台を目指します。

 そうすると真空ポンプだけではダメで、上述のベーキングという作業が必要となるわけです。bakingという言葉から分かるように、正に「焼く」作業です。

 10^-5 Paより低い真空領域で真空の邪魔をするのは、チャンバー内壁にくっついた分子です。もちろん、真空にされるところを素手で触るなんて御法度ですね。ちゃんと使い捨てのクリーン手袋をしましょう。

 この分子、常温では真空ポンプで廃棄されません。

 ベーキング作業は、チャンバーを真空引きしながら150℃くらいに加熱することで、この内壁にくっついた分子を引き剥がしてポンプで排出させる作業です。アルミは熱伝導率が良いので、ヒーターからの熱をチャンバー全体に隈なく行き渡らせるために、アルミホイルで覆っているわけです。

 ベーキングは装置を立ち上げたり、また長期休暇などで長期間装置を停止させた後には必ず行わなければならない作業ですが、丸一日かかります。その間、温度計 & 真空計とにらめっこです。このようにして真空度を良くすることを、業界用語で「真空を枯らす」と言います。

 東北大学に居た頃(2010~2015)は毎日のようにDLC実験していましたが、企業時代(2015~2020)はこういう作業から離れていたので、今一度基本から教えていただきながら作業しています。

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