ベクトルネットワークアナライザ(VNA)、一般に略して「ネットアナ」を手に入れました。
1万円台で手に入れました。1万円というと学生の皆さんは高いかと思うかもしれませんが、通常のネットアナは少なくともこの300倍は出さないと手に入りません。電子測定装置には色々なものがありますが、その中でもネットアナは最高級品の部類に入ります。高嶺の花です。アイドル級です。
それが今や1万円台で買えるようになりました。中古でもジャンク品ではありませんよ、ちゃんとした新製品です。良い時代になりました。
MHz帯やGHz帯の高い周波数を扱う高周波電子デバイスを評価・解析するには、ネットアナは必須アイテムです。ラジオから始まり、地デジ、衛星放送、携帯電話、無線LAN、レーダー、さらには電子レンジなどなど、高周波電子デバイスは現代の生活に欠かせません。
ただし、その開発や教育には高級なネットアナが欠かせず、いつでも誰でもというわけにはいきませんでした。理論書だけでは心地よい睡眠になります。不眠症もバッチリ・・・。例えば、クラスの学生実験用に用意するには人数的に10台は必要となりますが、それでは数千万の投資です。さすがに難しいです。高周波回路や装置は、波長が短くてちょっとした狂いでもおかしくなるデリケートなものですから、取扱にも気を遣います。維持費もかなりになるでしょう。ケーブルだけでも結構な金額です。そう、ケーブルは遊ぶものではありません!!
ところが今回のこれにて、研究室の皆さんと楽しく高周波を勉強することができます。ホント、良い時代です。
絶対性能はさすがに数百万の装置には劣りますが、日常の使用であれば問題ありません。高級品は、ここ一番のデータが欲しいときに借りれば良いのです。
ん?? ちょっと待てよ・・・、高周波デバイスって100年前からありますよね。だって、ラジオやレーダーは今に始まった技術ではありません。
例えばマグネトロン。2.45 GHzなどのマイクロ波を発生させる電子レンジの心臓部です。当初は軍事レーダーの発信源に開発されました。
昔はネットアナなどという便利なものはありません。ネットアナを構成するトランジスタ回路そのものがありませんから。紙と鉛筆の時代です。いやー、そんな時代によく開発したな~と感嘆します。この前、研究室立ち上げのためにEコースの学生実験室を宝探ししていると、機械的な高周波測定器具が出てきました。へ~、こんなので測定してたんだ、すげーと。また、昔の文献を読んでも、数式だらけでサッパリ分かりません。敵軍艦を見つけ出すのにいつまでも双眼鏡使ったんだから、そりゃ戦争負けますよ。
マグネトロンやクライストロンなどの伝統的なマイクロ波発振器はもはや成熟した技術なのですが、今現代の人達でもまともに理解できる人は少数でしょう。
便利な時代にお世話になりながら、古人の叡智を謙虚に学んでいきたいと思います。
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