DLC-GFET (2/3)

 続きです。それから通研と多元研との間で共同研究が始まり、私はこの間を行き来することになりました。片平キャンパスは、東西に走る2本の道路により北・中・南の3つの地区に分かれます。多元研は中地区の北側にあります。通研は南地区が本拠なのですが、中地区の南端にナノ・スピン実験施設というクリーンルームを含む建物を有していて、私はここにいました。多元研とナノ・スピンは、歩いて5分程度の距離です。

 とはいえ、最初はうまくいったはずなのに、後が続きませんでした。正にBeginner’s luckというものでした。「何故うまくいかないんだろう・・・」と、来る日も来る日も一人実験に往復しました。多元研でDLC成膜し、ナノ・スピンでデバイス化しと。雨の日や雪の日もありました。まるで私の足跡が道に刻まれるくらいに。

当時行き来に持ち運んだ携帯ケースです。

 その傍らで、DLCの化学構造解析に関する研究も進めていました。うまくいかないばかりでは生きていけませんし。評価を受けた2つ目[Susumu Takabayashi et al., “Relationship between the structure and electrical characteristics of diamond-like carbon films”, Journal of Applied Physics, 116, 093507 (11 pages) (2014)]です。こちらを論文出版したところ、2015年の春の応物の専門セッションで、DLC分野の権威である大竹 尚登先生(当時東京工業大学教授、現東京科学大学理事長)に激賞していただきました。いきなりでしたので、とてもビックリしました。

 ちなみにこの論文、量は10.5頁です。私の論文は、あれやこれやと考えているうちに長くなります。論文誌は、大きく学会誌と商業誌に大別されます。前者は学会運営で営利目的ではないので、購読料は安いのですが、投稿料を取られます。後者は出版社運営で、逆です。投稿料は取られませんが、購読料が高いです。なおこの高額な購読料は、大学図書館の経営を悩ませています。載せたJournal of Applied Physicsは学会誌ですので、投稿料金がかかりました。規程で10頁を超えると追加料金となっていました。たった0.5頁ですが、しっかりと追加料金を取られました。負けてくれなかったです。

 話がずれました。急遽その夜の懇親会に参加して、大竹先生に御礼のご挨拶をしました。・・・とまでは良かったのですが、当時私は任期切れを目前にして、次職を探していました。その話を先生にもしました。さぞビックリされたことと思います。まだ、上述のDLC-GFETが暗礁に乗り上げたままだというのにです。

 その後幸いにも、広島大学以来にお世話になっている岡山理科大の中谷達行先生に企業(株式会社アドテックプラズマテクノロジー)を紹介していただき、無職の危機は避けることができました。DLC-GFETは無念となり、悔し涙を流したものですが、これからは企業人として頑張っていこうと心を入れ替えることにしました。

 今後は、企業人として生きていくつもりでした。しかしながら高桑先生や中谷先生にサポートをいただき、また社長からは業務の支障がないならば論文を書いても良いという許可をいだたき、休日に論文を書いていくことになりました。研究会にも呼んでいただきました。加えて、プラズマの権威の一人である京都大学名誉教授の橘 邦英先生が社外取締役に就かれて、先生の知遇を得ることもできました。

 平日は開発と品質管理、休日は論文書きと、そんな生活を5年間続けていたら、たまたま現在の有明高専 創造工学科 エネルギーコースの准教授職を得ることができました。

 

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