DLC-GFET (3/3)

 さらに続きです。2020年4月、有明高専に着任しました。けれど企業からのため何の装置も持たず、手ぶらでやって来ました。

 当然、卒業研究指導はどうしよう・・・ということになりました。有明高専は旧帝大のような講座制ではなく、研究室は助教レベルからすべて独立研究室です。指導学生に使わせる装置はないので、初年度は、企業で少し経験した高周波導波管とそのネットワークアナライザ(ネットアナ)解析を卒業研究テーマとしました。ネットアナは最も高価な電気電子測定装置の一つで、1000万円を超えることもあります。しかし今はNanoVNAという小型のオープンソース装置が1万円程度で手に入ります。絶対性能では既存の装置に敵いませんが、卒業研究レベルなら大丈夫です。企業経験に助けられました。

 2年目になり、高桑先生が定年されるに伴い、光電子制御ブラズマ装置を2台頂きました。こうしてDLC研究が再びスタートしました。

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DLC-GFET (2/3)

 続きです。それから通研と多元研との間で共同研究が始まり、私はこの間を行き来することになりました。片平キャンパスは、東西に走る2本の道路により北・中・南の3つの地区に分かれます。多元研は中地区の北側にあります。通研は南地区が本拠なのですが、中地区の南端にナノ・スピン実験施設というクリーンルームを含む建物を有していて、私はここにいました。多元研とナノ・スピンは、歩いて5分程度の距離です。

 とはいえ、最初はうまくいったはずなのに、後が続きませんでした。正にBeginner’s luckというものでした。「何故うまくいかないんだろう・・・」と、来る日も来る日も一人実験に往復しました。多元研でDLC成膜し、ナノ・スピンでデバイス化しと。雨の日や雪の日もありました。まるで私の足跡が道に刻まれるくらいに。

当時行き来に持ち運んだ携帯ケースです。
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DLC-GFET (1/3)

 研究者として、これまでに世の評価を得た仕事が2つあります。一つは、グラフェンをチャネル材料とした電界効果トランジスタ(FET)のトップゲート絶縁膜(誘電膜)に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を適用できたことです[ Susumu Takabayashi et al., “Carbonaceous field effect transistor with graphene and diamondlike carbon”, Diamond and Related Materials, 22, 118–123 (2012)]。世界初の炭素質トップゲート型FETです。もう一つは、そのDLCの化学構造として、sp2クラスターモデルを提案したことです[Susumu Takabayashi et al., “Relationship between the structure and electrical characteristics of diamond-like carbon films”, Journal of Applied Physics, 116, 093507 (11 pages) (2014)]。

 大阪大学大学院で博士号を得てから2005~2009年の間、博士研究員として広島大学大学院 先端物質科学研究科に在籍していました。10年住んだ大阪から郷里に戻ってきました。そこでは高萩 隆行教授の下で、中谷 達行先生(当時企業、現岡山理科大学教授)らと共にDLCのX線光電子分光解析を行っていました。この研究は新規に立ち上げる内容ということで、全くのゼロから立ち上げました。「DLC、何それ美味しいの?」というレベルからのスタートでした。広大な広島大学 東広島キャンパスには、中央・東(工学部)・西(総合科学部)という3つの大きな図書館があり、これらをグルグル廻っては文献を調べて、研究を立ち上げました。4年目の2009年、高萩先生から「もっと見聞を広めるように」と、1年をかけて次のポストを探しました。そして2010年から東北大学 電気通信研究所(通研)に、引き続き研究員として勤めることになりました。初めての東北地方でした。東北大 通研といえば、電子工学分野の研究では日本のトップを走る組織の一つです。

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