鷹林研究室の研究の大部分には、クリーンルームが必要不可欠です。
クリーンルームとはその名の通り、清浄な部屋のことです。フォトリソグラフィーを用いてトランジスタや集積回路などを作製する際、塵やゴミがあるとその下が陰となってしまい、微細構造作製の邪魔になります。
クリーンルームの規格は、ISO 14644-1:2015で定められています。以前の規格はFederal Standard 209E (米国連邦規格209E)でした。ただし209Eは数値が分かりやすいこともあって、慣例的に未だ用いられています。
209Eでは、1立方フィート(1 ft3 ≈ 0.0283 m3で、1 ft ≈ 0.3048 m = 30.48 cm)あたりに存在する0.5 μm以上の粒子(塵、ゴミ)数で定義されClass分けされています。半導体処理用のクリーンルームは、Class 1000 (※ISO規格ではClass 6)以下です。そのクリーンルームの中には、さらに清浄度を上げたClass 100 (Class 5)や10 (Class 4)のクリーンルームが備えられている場合もあります。日常環境は Class 1,000,000程度にもなりますから、クリーンルーム内が如何に高い清浄度であるかが分かると思います。
この清浄度を維持するために、クリーンルーム内では清浄化された空気を常に流しています。一般的なダウンフロー方式では、天井から流して地下から排出しています。また、温度と湿度は常時一定です。ちなみにこれらの理由のため、クリーンルーム内では花粉症になりません。
容易に予想できると思われますが、クリーンルームを維持するためには莫大な電力が必要です。そのため近年において、全国のクリーンルームは縮小や廃止の傾向にありました。有明高専にも昔あったそうです。
こちらにやって来た当初は、「自分で予算取ってきて設備構築しないと・・・」と頭を抱えていました。ところが、ここ最近の半導体ブームです。台湾から熊本へTSMCが上陸して、黒船来航の再来かと思うばかりの状況です。なんと外圧に弱い国でしょうかねぇ。これでもかつては世界一を誇った電子技術立国なんですけどね。
こちらに来て幸いにも九州大学と九州・沖縄地区の9つの高専との連携教育制度が新しくできて、そのご縁で九州大学 筑紫キャンパス内のクリーンルームを使用させて頂くことができています。有明には何もないけど、近くには何でもあります。
クリーンルーム内へは、クリーンウェア(防塵服・無塵服)を着て入ります。手は手袋、足はブーツ、そして繋ぎのクリーンウェアにマスクで、露出は目元だけに限ります。人間が一番の塵発生源となるからです。ペンもボールペンです。鉛筆やシャープペンシルでは、黒鉛の粉が飛散します。
クリーンウェアに慣れないうちは、思っている以上に疲れます。クリーンルームではテキパキとした実験作業が求められます。
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