研究と人気

 これまでの研究人生、「電気化学」とか「プラズマ」とか、学際的な分野を渡り歩いてきました。いずれも従来からの伝統的な自然科学分野の縦割りでは、分けにくい分野です。そしてこれら分野に共通するのは、「人気がない」ということです。

 偏屈な人でない限り、化学科の人は化学、物理科の人は物理、電気科の人は電気、というように、各科分類が容易にイメージできる研究分野が人気です。

 高等教育は、研究室に入ってからの生活が本番です。クラス単位の座学は序章でしかありません。ただし研究分野の選択は、その序章の段階で行われます。ですから研究分野によっては、それまで学んだことのないようなことがたくさん出てきます。

 例えば半導体工学という分野では、プラズマは必要不可欠です。プラズマを理解するには、放電工学、真空工学、量子力学など、さらに新しい学問を学ばなければなりません。しかし序章段階の普通の学生さん達は、そこまで洞察はできないでしょう。

 私が渡り歩いてきた研究室は人気のないところばかりでしたが、主催者である教授の先生方は逐一の人気に動じてはいませんでした。実際の研究成果はいずこも世に誇れるものでした。ですから、その教えを受けた私が今の立場に居ることができます。

 「人気があるということは、先が見えている」ということです。序章の知識レベルの段階で先を見られた研究に、夢や希望は少ないものです。

 人気があるということは、変な期待をされます。その期待はとかく一方的なもので、受ける側としては困る類のものです。一方的に期待され、そして一方的に幻滅される。

 振り返れば、大学4年次の研究室選択のとき、分かりやすく楽しそうな研究している研究室を選択しようとしました。しかし当然競争率は高く、留年していた身なので発言権も弱く、結局全く人気のなかった電気化学の研究室に同じ留年生と2人で入室しました。何も知らずに、分からずに。しかし時間を経るにつれて、電気化学の面白さを感じるようになり、博士課程に進むと、後輩に指導する立場になりました。

 私が行っている研究もその流れを汲んで、人気が出そうにないものです、しかしながら幸い、評価していただける御贔屓さん達には恵まれています。

 今、自分が序章の頃に思い描くことなんて想像すらできなかった世界にいますが、実際自分の性に合っている世界だと思います。

 人気がないのも困りますが、人気が出すぎると行く末を心配します。

 まあ動じずに、我が道を進むだけですね。

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