設計とそんな時代もあったねと

 後期から回路設計実習の授業が、3E、5E、6Eで始まりました。

 私のような化学(C)出身の人が電気(E)の人に期待することは、主に2点挙げられると思います。

1. 回路が設計できる(つくれる)こと

2. 電磁気学(電気磁気学)がわかること

です。「この実験をしたいんだけど、反応制御には電気回路が必要だ(電気化学でのポテンショスタットなど)。しかし、回路つくれんな~」なんて。

 でも、あれ、不思議ですね? 両方とも担当授業です・・・。うむむむむ。我が人生、「○△×をしてほしいな~」と他力本願に思ったことは、結局自分がやる羽目になってしまうことが多々あります。

 さて、電気(※主として弱電分野)が他の分野と違うところは、「理屈を知らなくてもできる」ということがあります。

 古くから並べると、「鉱石ラジオ」、「真空管アンプ」、「アマチュア無線」、「コンピューター」、「パソコン通信」、「プログラミング」、「インターネット」と、世代毎に流行があり、ある世代はある分野が異常に強かったりします。いずれも、真面目に理論を修めようとすると結構大変です。

 何故こうなるかを考えてみます。前にも述べたように、電気の世界はMaxwell方程式で全て説明できます。Maxwell方程式から電荷保存則が導かれ、電荷保存則から「キルヒホッフの法則」が導かれます。こうして電流の流れ(※このフレーズは「湯を沸かす」と同じように、よく考えると変ですが、正しい日本語とされています)を単純な代数計算に持ち込めます。電圧に関しても、「重ね合わせの理」から同様に持ち込めます。重ね合わせの理は原理(= 神様が根本的に決めたこと)であり、Maxwell方程式の土台の一部です。なお、オームの法則は最も有名ですが、付随的なものです。トランジスタやダイオードには適用できません。以上をまとめて難しい言葉で表現すると「二端子対回路」であり、素子の複雑さはどうでもよく、電流/電圧の出入りさえがわかれば良いということです。

 そしてこの電圧信号の大小をYes/Noでくっきり分けていくのがデジタル信号処理であり、これが上掲のコンピューター以降に繋がっていきます。

 他方、化学の場合はこのようにはいきません。化学実験を家庭で行うのはハードルが高いです。石鹸をつくる「鹸化反応」が数少ない例の一つでしょうか。そう、石鹸もれっきとした化学化合物です。「天然石鹸」という言葉を耳にすることがありますが、なんか違和感があります。

 話を電気に戻します。電磁気学の授業内容は、今も昔も変わっていないでしょう。今も昔も、頭を抱える人は同じようにいます。当時の学生の手記を読めば、一目瞭然です。

 しかし回路設計の授業内容は、時代により変わっていきます。ある世代に得意なことは、別の世代には全くわからなかったりします。

 真空管は正に良い例で、趣味的なものを除いて、今や真空管の教科書なんてありません。昔、研究関連で「空間電荷効果」を調べるのに、古本屋で真空管の教科書を探しまくって、ようやく見つけました。

 電気は時代の変遷が激しいです。Maxwell方程式は変わらなくとも。

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