節約とは一見、批判の余地のないことのように思えます。
世間には、目前に映る節約可能な事象に対して、目の色を変える人がいます。これは絶対善だと。さて、本当にそうでしょうか。
例えば、性能が良くて事後整理など自動で行ってくれるけど印刷コストがちょっとかかる印刷機と、手間はかかるけどコストは安い装置があったとしましょう。件の人は後者を絶対推しします。
しかし、考えてみましょう。人間にとって、いや、生きとし生けるものにとって、最も大事なものは金銭ではありません。「時間と空間」です。時間は、老若男女貴賤を問わず、常に失われていくものです。相対性理論は時間を含む四次元空間で記述されますが、唯一時間だけは人が制御できません。他方、空間については、宇宙のスケールで考えますとそれは無限ではありますが、人一人が扱える空間は、財力など様々な要因で実に狭いものです。歴史を紐解けば、その空間への欲望は、戦争を引き起こす原因の最たるものです。
そう、件の人は、時間と空間というコストをまるで無視しています。前者の装置は、具現的な金銭的コストは要しますが、時間と空間のコストは減ります。自動的にやってくれるので、装置に張り付くという空間制限もないからです。その分、別の仕事や休憩に時間を充てることができます。品質管理的に言うと、工数が削減できます。仕事が切り上げられて、その分プライベートを充実させることもできます。
後者の装置は、たとえ金銭的コストが多少和らいだとしても、逆に工数は増え、担当者は疲弊します。結果的に人件費は増えてしまいます。コストというものは、総合的に考えないとなりません。一つの要素だけで決定できるものではありません。そうでないと、人類は原始時代に戻るしかありません。
そう、知性のある人、世の中で賢いと言われる人というのは、時間と空間を大切にする人のことです。常に失われていくもの、常に制限がかかるものに対して、最大限効率化を目指します。
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