決算と情報公開

 11月も半ばを過ぎました。年度末までに消化しなければならない予算枠について、決算に向けての整理が必要な時期になりました。幸い今年度は資金が潤沢でして、消化しなければならない予算枠、来年度以降も使える予算枠と多くの選択肢があります。ただし、専属の秘書さんも会計担当者さんもいなくて、一人で事務処理しているものですから、未整理が貯まってきています。そこで事務方の助けを借りつつ、数字とにらめっこしています。

 つい昔の「いや、もうどうしよう・・・」という何もない日々に比べれば、随分楽になりました。予算を稼ぐのは、研究室主催者として一番の仕事です。どんなに綺麗事を言っても、お金がなければ研究も何もできません。学生さん達を学会に連れて行くこともできません。

 研究設備もさりながら、こういう高等教育機関で研究室を主催するにあたって最も大事なことは、「学生さん達の可能性を開花させる」ことだと思います。そう、以前にも書いたように、教育とは、「何人であれ、その者が活きるように導くこと」だと思います。

 加えて高等教育には、「自分で自分の道を選べるように導いていく」ことがあると思います。教育システムの最上位にある高等教育は、最も幸せになれる教育でなければなりません。最も幸せなこととは、「自分の人生を自分で決定できること」だと思います。いくら金銭的に裕福だとしても、人に決められる人生では、決して幸せにはなれません。

 選べる能力を身につけさせるためには、世の中にある選択肢、すなわち情報をできるだけ学生さん達に公開・提供していかなければなりません。卒業研究活動という枠組みでは、学会が最も分かりやすい選択肢でしょう。

 しかし学会もピンキリです。高専だけの内輪の集まりから、地方大会、全国大会、そして国際会議まで様々なレベルがあります。できるだけ高いレベルの学会に出して、世の中の広さと勉強すべき事柄を悟らせ、その上で自分の進むべき道を考えさせるようにしています。それから学生さん達が自然と育ってくれることで、研究室運営は楽になり、業績も上がっていくという好循環が生まれます。もちろん学生さん達はそれぞれの道を目指して毎年巣立っていくものではありますが、好循環のDNAは残っていきます。全ては主催者次第です。

 このようなことを全ての研究室学生にしようと思ったら、相応の費用がかかります。幸い、私の志に賛同してくださる企業もいてくださり、その寄附金で何とかやりくりできているところです。

 目下、4年生の研究室選択時期です。これに臨んで、これまでの研究室における研究業績と研究プランを提供しました。この情報公開と提供は、上述の高等教育の理念に従えば、必要不可欠なことと思います。

 都合の悪いことを隠して、結果的に学生さん達の可能性と将来を閉ざしてしまうことを只々、大変恐れます。

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