1年1ヶ月前

 今週は4Eが分散登校対象で、毎日実験でした。皆さん、お疲れ様です。明後日6月21日は楽しい日曜日で、1年1ヶ月前の日です。何の前か? 「RoHS指令の鉛適用除外廃止」のです。

 RoHS (ローズ)は「Restriction of Hazardous Substances (危険物質に関する制限)」の略で、欧州委員会(つまり欧州連合 EU)が定めた化学物質規制に関する決まりごと(指令)です。薔薇はroseで、綴りが違います。RoHSを守っていない製品は、EU加盟国内で販売することができません。化学物質の使用規制に関する決まりごとは色々なものがありますが、RoHSはその最も代表的な一つです。

 RoHSで規制される物質は現在、「鉛、水銀、六価クロム、カドミウム、ポリ臭化ビフェニル (PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル (PBDE)、フタル酸ジ-2-エチルへキシル (DEHP)、フタル酸ブチルベンジル (BBP)、フタル酸ジ-n-ブチル (DBP)、フタル酸ジイソブチル (DIBP)」の10種類です。変な名前の物質もあるかと思いますが、世の中にはそんな物質もあるのです。均一材料中の濃度が、カドミウムを除いてそれぞれ1000 ppm (0.1%)を越えてはなりません。カドミウムだけはより厳しくて100 ppm (0.01%)となっています。分母は均一材料ということで、製品中ではありません。電気電子分野で例えると、トランジスタ素子中の濃度ではなくて、トランジスタの銅配線中やはんだ中の濃度になります。細かいです。

 しかしこれをガチで守ってしまうと、製品がつくれません。というわけで、特定の使用用途に関しては規制濃度を超えてもよいことが許されています。これを適用除外(Exemption)と言います。

 適用除外は鉛に関するものが多く、一番関心が高いです。一部を紹介しますと、銅やアルミニウムでは、切削加工をしやすくするために、少し鉛を混ぜているものがあります。適用除外の用途それぞれには、特有のコードが割り当てられています。このアルミニウムの例では「6(b)-I もしくは6(b)-II」、銅の例では「6(c)」というコードが割り当てられています。

 前置きが長くなりました。この鉛の適用除外が、1年1ヶ月後の2021年7月21日をもって廃止されまくるのです (> o <)。

 まだ1年以上あるじゃないか~、なーんて余裕をかましてはいけません。顧客は、自分達を守るために、余裕をもった改善期限を要求してきます。半年前とか。もし要求が守れなかったら・・・。

 ??? ここで賢い人は気が付かれたかと思います。「製品 → 材料 → 原料」へとメーカーを遡って行き(この繋がりを「サプライチェーン」と言います)、各段階のメーカーがその上流(川上)側に余裕を持った要求をしてきたら、川上の方のメーカーは一体何年前から対応しておかなければならないのでしょうか。そう、ここが化学物質規制全般で対応のムズカシイ問題なのです。ムズカシイので置いておきましょう・・・。

 でもそんな前倒し要求を除いても、各メーカーの品質部門は自分達自身のために、購買/調達、開発/設計、生産/製造、営業部門へ調査・検討指示を出し、社内をまとめなければなりません。営業は意外に思うかもしれませんが、製品価格(コスト)に跳ね返るからです。

 納入業者さんにも代替品確保などの対応依頼を出します。「わからないよ~」というところには、都度説明会を開きます。

 鉛の適用除外は、トランジスタの内部配線の例でお分かりかと思いますが、非常にたくさん使われています。一つの製品には数百点の部品、それぞれの部品には数十の材料、その材料には数種類の化学物質が使用されています。さて、調査すべき化学物質の延べ数はいくらになります?

 こちらに来てそんな生活から離れましたが、少し気になって現況がどうなっているか調べてみました。やはり、「延期してくれ~」のリクエスト(requested for renewal)が出ているようですね(※各コード名称に、対応するEU官報(Official Journal of the European Union)へのリンクが貼られています)。そりゃ、コロナもあることですしね。

それでは、教員頑張ります。

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