研究と顧客第一主義

 研究を続けていると、「うわーマジかよー!!」という実験事実に遭遇したり、思いがけない結論に到達したりします。「まいったなー」と頭を抱えることは日常茶飯事です。このような神さまの冷徹な判定に対して、研究者はその意を汲み取ろうと必至に考えます。議論で2時間なんて、あっという間です。

 普通は、「実験事実が間違っている」とは考えません。まあ、誰でもそう思いますね。しかし現場で日々闘っていると、そうも思いたくもなる時があります。これって、そう、悪魔のささやきですね。傍目八目的立場では決して分からない体験です。

 このような自分自身の力ではどうしようもない実験事実を突き付けられて、その対応に頭を悩ます経験は、ビジネスの世界にも生きてくると思います。「研究なんて関係なーい!!」と宣う人は、ビジネスの世界で成功はしません。逆に言えば、顧客の面前で日々苦闘しているビジネスマンには、研究の才能があるでしょう。難しい理論や数式などの知識が表に出てくるので、「はぁ?」と思われるかもしれませんが、本質的に要求される能力は満たされていると思います。それは、「謙虚に学ぶ」能力です。知識はあくまで道具でしかありません。

 優秀なビジネスマンは、顧客の意見や判断に対して、「どうすれば我々は改善できるか」と必至に考えます。「お客様は神さまだ」という言がありますが、それはお客様を腫れ物に触るようにチヤホヤすることではなく、その冷徹な判定から謙虚に学ぶべしということです。「顧客第一主義」は、決して使い古されたフレーズではありません。

 真摯に研究に取り組んだり、ビジネスシューズの底を減らしたりしてきていない人は、「実験が間違っている」とか、「うまくいかないのは顧客が理解できていないからだ」とかという驕った結論に至ります。上から目線というやつですね。これらが原因の可能性は全くないとは限りませんが、主流となることはあり得ません。もっとも、彼らは上面では驕ってはいますが、内心では逃げている臆病です。メルヘンの世界に現実逃避ですね。そりゃアナタの世界では、アナタが一番ですよと。

 昔々の大学院生時代、我々学生達が恩師との議論で詰まると、恩師は「君、逃げるの?」と学生達をたしなめるが口癖でした。学生達はそうならないために、必至に考えては挑んでいました。まあ結局、みんな揃って返り討ちにされていたんですけど。

 いつの間にか、私も返り討ちにしなければならない立場になりました。

 まとめると、「我々の魅力が伝わらない」のではなく、「我々には魅力がない」という観点に立てば、自ずと何をすれば良いかが分かり、魅力も出てくるものです。研究もビジネスも。

 さて再来週から後期が始まります。準備することはまだ山積です。

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