高等教育とテストと卒業研究

 本日から後期中間試験です。試験すなわちテストというものから、高等教育について考えていきます。

 個人的には、4年生までの試験はガチガチに行いますが、以降の5年生と専攻科では比較的楽にするようにしてします。もちろん、後者の方が内容は高度ですよ。その理由は、決して手を抜きたいわけではなく、「高等教育をしたい」からです。

 有明高専では、4年生後期から卒業研究が始まります。一般には5年生になってからなので半年早いのですが、これは素晴らしいことだと思います。それは、「卒業研究が高等教育の象徴」と思うからです。

 一般に、授業形態は大きく分けて、3つあります。

・卒業研究
・実験、実習
・座学

 座学は、後期中等教育もしくはそれ以下と思います。要するに高校です。何故なら、学ぶというより、座って「学ばされる」からです。高等教育機関が高等教育機関たり得る根拠の一つは、卒業研究すなわち研究活動があるからです。実験、実習は両者の中間です。

 高専(高等専門学校)と同年代の若者が集う学校には他に、私立専門学校と厚生労働省所管のポリテクカレッジがあります。後者には馴染みがない方も多いかもしれませんが、工業職能訓練を主眼にした専門学校です。高専はこの中で卒業研究を行うことができ、そのため他二者に比して社会的評価が高いです。

 研究というものは、テストやナントカ資格とは違って形のないものであり、点数評価しにくいものです。ですから後回しにされる場合があります。しかし、座学や資格の試験勉強、ましてや落とした単位の取得への勉強に卒業研究を削るのは、「本末転倒」です!! 高等教育を自ら否定して、自らをわざわざ低めて一体何がしたいんでしょうか?

 研究活動というものは、決して専門バカをつくるためのものではありません。未知への探求を通じて、「考える力・まとめる力・切り拓く力」を、時間をかけて養っていくものです。社会で評価される能力はこれらの力であって、決してテストで100点を取る力ではありません。座学や資格は、高等教育たり得る研究活動・探究活動の土台にしか過ぎません。

 高等教育が行き着く先は、大学院での博士号です。博士は専門以外はダメなんじゃないの?という意見があります。それは、三流の博士で、まがい者です。博士号というものは、修めた専門性に限らず、世の中の様々な困難や課題に対して、先の3つの力を駆使して、それらを解決かつ未来を提示する能力を保障する証明書です。どうしても専門分野を頑なに主張したいのだったら、それで10年社会で飯を食ってから言えです。

 以上の理由で、4年生後期から研究室配属されて卒業研究を始めたら、私は卒業研究を第一とすべきと思っています。冒頭を補足すれば、研究室配属以降の座学において、卒業研究に支障を来すような過度な要求はすべきではないと考えています。ただし4年生までは、大学編入学、専攻科、就職に関するテストが先に控えていますし、研究活動に対する基礎学力がまだ不十分なので、定期テストはガチでやります。

 5年生と専攻科でその座学内容を深く知りたければ、道筋は教えていますので、後は自分で参考書や関係書籍を手に入れて、自分で勉強していくべきだと思います。そのために校内に図書館があります。内容が高度になれば、いくら授業時間を取ってもキリがないです。それよりも研究活動よろしく、自分で深めて 、「考える力・まとめる力・切り拓く力」を養っていくべきだと思います。

 「学ばされた」ことは、すぐに忘れます。それだけではただの高校生で、後期中等教育を終えた人でしかありません。社会の評価もそれなりです。

 卒業研究は研究室単位で行うものですから、研究室の主催者たる教員の力量が真に試されます。研究室に入ってきた学生さん達には、高等教育の名に相応しい研究活動をしなければならないなと、自らを戒め、そして律するものです。

 

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