学生の意識 ~ 専攻科編 ~

 高専の卒業先進路には、「就職・大学編入・専攻科進学」という3パターンがあります。前者2つは分かりやすいですが、専攻科は馴染みがない人も多いかと思います。専攻科は、さらに2年間を高専を過ごすことで、より高度な学問を身につけ、最終的に大学学部卒業と同等の資格すなわち学士号を得ることができます。それに対して従来の5年生までは、「本科」と呼んで区別しています。

 おおよそ本科学生の上位3割は、とても優秀だと感心します。彼らの多くは進学希望ですが、どこの大学に編入させても大丈夫かと思います。その中には帰属意識が強くて、専攻科に進学する(残る)学生達もいます。どちらが良い選択肢かは、個人に依ります。なお現制度での専攻科の定員は、本科定員の1割と狭き門となっています。

 ただし高専生の優秀さというのは、強制された、ある意味人工的な優秀さです。高専の授業スケジュールと管理は厳しく、学生達は教員からの指示を日々こなすだけで大変です。このような仕組みはある一定のレベルを揃えるには適していますが、反面、自分で学び取っていくという力を奪いかねないという諸刃の剣です。

 有明高専では4年次後期から研究室配属があり、卒業研究活動が始まります。ただしクラス単位が基本なので、研究室配属と言っても、選択科目の延長線上の意識です。専攻科は逆に、その研究室所属となり、クラスはなくなります。

 専攻科は、大学院博士前期課程(修士課程)をイメージしていただければ理解しやすいかと思います。専門科目に特化した高専の教育システムでは、普通科からの大学生と比較して、おおよそ2年ほど専門科目を先取りしています。そんな専攻科とはいっても、実際の博士前期課程と比べればさすがに実力は劣りますが、それは学齢を踏まえれば仕方のないことです。

 さて問題かつ注意すべき点として、専攻科の核となる研究活動では、本科で身につけさせられた人工的な優秀さは役に立ちません。否、研究活動に止まらず、より高度な学問を修めていくには、自ら探求する力が求められます。一般に学齢が上がってくると、強制から探求へと教育システムを切り替えていかなければなりません。高校 → 大学というルートでは、大学受験が自動的にその切り替え口となっていますが、連続性のある高専の教育システムでは難しい事柄です。創造工学科になって、そのような探求活動を基盤にした授業科目が増えましたが、その成否はまだこれからです。

 大学も4年制と長くはありますが、研究室配属前と後では環境が全く異なります。研究室配属前の低学年時代は自由放任であり、悪く言えば、横の人間関係を駆使して遊べます。しかしながら大学生達はそんな自由な環境の中で、「学ぶとは何か、自分が進むべき道は何か」を自然と考えるようになります。本質的に勉強する姿勢ですから。その学びは、自ら探求していくものとなります。それは高専の強制的な教育とは異なり、歩みは遅く、低学年では高専本科生の方が圧倒的に学力をリードしています。

 ただし研究室配属後では、そのゆっくりとした歩みは大輪の花を咲かせます。研究室配属後は、研究室中心の縦の人間関係となり、卒業研究や学会活動を通して世代間交流することで学びを深めていきます。試行錯誤しながら身につけてきた探求力は、そんな環境において、より高度な学問を身近にしていきます。

 一方で我らが専攻科生は、どうでしょうか。卒業式&入学式を挟んでいるとはいえ、環境は本科と連続します。彼らを、強いられた学びから求める学びへ転換させていくことは、偏に各研究室の指導教員の責任にかかっています。一般大学生に対して、学生達を途中までリードさせるだけの存在にするか、さらに伸ばしていくか。教員の力量が問われます。

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