自由をこなす力と卒業研究

 学生さん達は、夏休み中です。教員って夏休みはヒマなんですかって? いえいえ、と~~んでもございません。むしろ、より忙しいほどです。夏休みの期間は、開講期間にできなかった研究を進めたり、次期の授業準備をしたりと、もう大忙しです。ねこねこ55の手も借りたいです。

 突然ですが、私、博士です。「士」とか「師」とかつく職業の人、つまり士/師族の一人です。略して「S族」にしましょう。S族には、博士、弁護士、司法書士、会計士、医師、歯科医師などなど、色々ありますね。これらS族に共通する能力は何か分かりますか?

 専門知識? それもありますが、もっと大事なものがあります。

 それは、「自由をこなす力」です。

 自由な時間を如何に有効に運用できるか、使いこなせるか、です。S族は、人に指示する立場であって、指示される立場ではありません。ということは、自らを律して自らを管理することが求められます。無論、指示することに驕るというのは、論外ですね。

 S族は、世間からそれぞれの分野でのリーダーシップを求められます。大学院生時代に、恩師によくよく教えられました。「判断し、決断し、実行する力」を求められます。その分、自由な時間裁量が許されています。

 その自由時間を如何に有効に消費できるかが、これら職業の人達のランキングに繫がるでしょう。

 自由を使いこなせない人は、S族を名乗る資格はありません。

 私は自身を忙しくすることもできれば、ヒマにすることもできます。ただし、怠ったツケは自分で償わなければなりません。S族は、生み出す結果が全てで、自己責任です。

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続きはまた今度

 前回の続きです。ベーキングが無事終わり、PA-PECVD装置が組み上がりました。

 ↓の写真は装置の一部である、イオンゲージ(ionization gauge)です。gaugeとは計器一般を指しますが、ここでは真空計を意味します。イオンゲージは正式には、「B-Aゲージ (Bayard-Alpert hot cathode ionization gauge)」と言います。

イオンゲージの拡大写真。手前2つのカギ(L)型電極の間にあるフィラメントは細くて、拡大しても見えにくいですね。

 真空度(圧力)は真空計で測ります。「そんなん当たり前じゃーん!!」なんではございますが、実は真空度により真空計は複数使い分けなければなりません。と言いますのも、真空計ごとに正しく動作する圧力領域が異なるからです。大気圧(10^+5 Pa)から10^-1 Pa台くらいまでは「ピラニゲージ (pirani gauge)」、10^-1~10^-4 Pa台くらいまでは「ペニングゲージ (penning gauge)」、そして10^-4 Pa台くらいより下は↑のイオンゲージという風にです。今回の装置にも4種類揃っています。えっ? 3つしかないじゃん。ええ、もう一つ、「キャパシタンスマノメータ (capacitance manometer)」という、ペニングゲージとほほ同じ領域ですが、より精密に測定できる真空計を実際の実験条件制御用に備えています。キャパシタンスマノメータという名前は知らない人も多いと思いますが、代表的な商品名「バラトロン (Baratorn)」は有名です。

 さてこのイオンゲージ、測定範囲より高い圧力のときにスイッチONすると、フィラメントが焼き切れて壊れてしまいます。フィラメントのスペアは結構高いので、この業界では「怒られる定番ネタ」の一つです。フィラメントは細くて、↑の写真ではピントが合わずに見えにくいですが、手前の高さが異なる2つのカギ(L)型電極の間に垂直に繋がっています。

 今回新しく計器をセットアップするに際して、採用した在庫品のは切れていたので、新しく付け替えました。しかしこの作業、細かくて慎重を要するので、結構手間がかかりました。

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プラズマCVD装置組み立て中

 有明はまだ雨が続きますね。そんな中、私はただいま東北大学@宮城県仙台市にて、プラズマCVD (plasma-enhanced chemical vapor deposition, プラズマ化学気相成長法)装置を組み立てています。↓の写真がその装置で、昨日組み上がりました(※正確には、組み上がる直前の写真)。

 中央のチャンバー内に基板を入れて、内部を真空にし、その後適当なガスを適当な圧力分入れます。そして放電させてプラズマを生成します。プラズマ中でガス分子は分解されます。分解されたガス分子は基板上に堆積して、膜を形成します。

 作っている装置は、「光電子制御プラズマCVD (PA-PECVD)」というプラズマCVDの一種で、オリジナル装置です。これでダイヤモンドライクカーボン(DLC)という炭素膜をつくって、その物性を評価する研究を行っています。

 電気に何の関係があるかって? プラズマは、高電圧放電の応用の一つです。また作られるDLC膜は誘電体材料であります。DLCは、ハードディスクや金型の表面コーティング材など、既に幅広く用いられている材料です。私はDLCの誘電性に着目して、まあ、いろいろやってきたわけです。

 電気だけでなく、物理や化学の知識も要ります。色々勉強できますし、多方面に顔も利くようになりますので、研究内容を気に入ってはいます。

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批判すること、されること

 研究活動をしていく際、多分どうしても避けられないことになると思いますが、批判活動をせざるを得ません。すなわち、「先行研究の○△という点が不足、欠点、ないし間違っている」ということです。

 高校時代にある先生が仰せられたこと、「評論家になるな」という言が、今もっても頭に残っています。批判に終始せず、自らの行動をもって示すことです。

 研究活動で、全く未知のフロンティアを自由に進めることはまずありません。必ず先人の活動があり、それを乗り越える形で自らの路を作ります。

 古人曰く、「巨人の肩の上に立つ」です。

 乗り越える懸命さは、時に批判という活動に繋がります。先人には先人の壁があり、それは時に答えを知っている後世の私達には低く見えるかもしれません。その際には、自分がもし同じ立場だったら乗り越えられたかと、厳しく自省しなければなりません。

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オリンピックとマスコミと価値観と人の幸せ

 そういえば、オリンピックが閉幕しましたね。結局ほとんど見ませんでした。いや別に、開催に反対とかではなく、単に興味がなかったのと、前期授業のまとめをしたり、後期授業の準備を考えていたりして、時間がなかったからです。

 自分の時間を大切にしたいお年頃になったので、特に必要でないことには時間を割かないようにしています。若いときは、見聞を広めようと、色んなチャレンジをしては色んな失敗を積み重ねてきました。無理な人間関係を構築しようとしては、失敗もしました。思い返すと後悔することや恥ずかしいこと、たくさんありますよ。

 でも、もう枠を広げるのは十分です。今後の人生は枠を絞って、一つ一つを大切に、かつ深く考えていくようにしています。嫌なことは断り、無理をせずに、着実に。

 自分は自分、他人は他人です。

 「艱難辛苦汝を玉にす」とは言われますけど、いやもう十分経験してきたとは思うんですよね。

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続いて大雨中!!

 今朝雨が一時的に小康状態となったので、高専に現状確認に向かいました。いやはや、用水路見てくる人の気持ちが分かります。ただし、いつもの道は怖いので、安全なバス路線を使って。有明高専行きバス(西鉄バス15番線)は高台を経由しますから。

 幸い、昨年のような浸水被害はなく、無事でした。

 その後は、着ていく服やお土産をショッピング。大雨でも、街の経済活動は活発ですね。

 そう、来週は東北大学@仙台で研究活動です。

 九州の人は九州大学大好きですが、東北大学も仙台の街も良いですよ。

 住めば都です。最初は縁も所縁もなかった仙台ですが、今や訪れることが楽しみです。

 そして実は私、このご時世のため、九州大学に一度も行ったことがありません。用事はあるのですが。

 なかなか世の中は、うまく行きませんね。

P.S. JRが不通となったために、荒尾駅に色んな形式の電車が勢揃いしていました。

左(下りホーム)から、813、815、811、415、817系ですね。

今年も大雨中!!

 例によって例の如く、昨日から、昨年7月と同じ感じで大雨です。しかし九州はよく雨が降るなぁ。

 昨年と違うのは、今年はお盆休みで自宅にいること。昨年は高専にいて、帰宅に車で2時間半かかりました。通常15分。

 周囲の道路は同じく冠水しているところもあり、家の外に出られないです。出られないだけで、生活には困りませんけど。

 後期の授業資料作成のための書籍を高専に取りに行きたいんだけどなぁ。と思いつつ、気分が乗らないので、iPadでDQ5やってます。

 しかも昨年と違って今年は研究室を開設しているから、研究室設備が心配です。

 天災は、座して待つしかないんですよね。

 あ゛ー、冒険の書消されたよ・・・。俺のために仕事しろよですか、はい。すいません。

Fourier級数とFermi–Dirac分布とこの世の成り立ちな自由な研究

 人類の歴史上で賢い人間を挙げろと言われたら、私は2名の人物を推します。Faraday (ファラデー)とFourier (フーリエ)さんです。

 ファラデーさんは、電気磁気学(電磁気学)がもたらす物理現象を一つ一つ実験的に明らかにしていった人です。電磁気学は後年Maxwell方程式でまとめられたように、Maxwellさんが電磁気学の最終的な勝利者と言えなくもないですが、その基礎を造ったファラデーさんの実験力と観察力にはそれ以上に脱帽です。

 一方のフーリエさんは 、その名を取ったフーリエ級数で有名な人です。フーリエ級数曰く、「あらゆる周期関数は、三角関数の級数和で示される」です。なーんてこと思いつきます? その発想力には脱帽です。

 カクカクした矩形波をフーリエ級数で表すと、

という式になります。これをグラフソフトで描いてみます。愛用のソフトはIgor Proです。∞までの和をとるのは不可能なので、k = 15までに留めると、

という形状になります。

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