人は組織的動物です。家族、学校、会社、趣味のサークルなど、人は何らかの組織に一つ以上属しています。二足歩行を始めてからどんなに知能が発達してきても、結局人は一人で生きていくことはできません。
しかし人が複数集まれば、必ず利害関係が生じます。個々人の環境や志向が全く同一であることはないですし、たとえ同一だとしても、同一条件を並列させることは困難です。
そこで、第三者が利害調整に入ります。それがManagerです。体育会系クラブでお茶運んでくれる人ではありませんよ。監督や上司などという人達です。Manageの原義は、「何とかする」という意味です。Leaderとも言い換えられます。
個々の要望を100%聞きたいところですが、必ずそうとも行きません。たとえば二人の人物がそれぞれ100の要求をしてきたが、160しか満たせない状況があったとします。単純80ずつにすれば良いかというと、事情はそう簡単ではありません。片方の要望に将来性があれば100と60に分けて、組織としての利益を追求するとかがあります。そうすると、60とされた人からは当然不満が出ます。
Managerは、不平を受けたり、恨みを買ったりします。しかしそれが、Managerの仕事です。組織としての最大公約数的幸福を追求するのが仕事です。
組織には不満が付き物です。給料が安いとか、建物が古いとか、色々不満は出てきます。でも、一番ダメな組織は、Managementができない組織です。どんなに優れた個人を集めたとしても、Managementができない組織に未来はありません。
人はプロ野球に何を見るか。子供達は個々の選手の活躍ですが、大人はそこにチームmanagementを見ます。
Managementができない組織は、極悪人がいるからダメなわけではありません。むしろ、悪役になってくれる人がいないからダメなのです。Managerはときに、悪役でなくてはなりません。
みんな仲良し、良い子クラブが果たしてどうなるか。歴史が教えくれています。そう、鎌倉幕府の成立です。
汚れた仕事を嫌う平安貴族の世は、厳しい自然と向き合う開拓農場主すなわち武士の土地などの利害を調整できませんでした。源頼朝がその調整機関として鎌倉に幕府を開くと、律令制度から見たら歪な組織にあるにもかかわらず、武士達の支持を集めました。その源氏が三代で滅んでも、承久の乱に打ち勝って幕府は続きました。日本史上、賊軍が勝利した事例はこれ以外にあるでしょうか? (※継体天皇の場合は不明が点が多いし、壬申の乱は皇族間だから違うかな。) それほどManagementは重要なものなのです。
水が流れていくように、世の中も流れていきます。良い子であり続けたら世の中が幸せになるならば、それは素晴らしいことですね。様々な流れを逐一制御できるダイナミックな良い子であればですが。
その後の幕府は事実上、北条執権体制、さらには北条得宗家による専制となって変貌していきますが、100年以上続きました。
北条の世は最後には後醍醐天皇と足利高氏(※当時)によって打ち破られ、さらにその尊氏(※改名)が後醍醐天皇を打ち破ることによって、室町幕府となります。
しかし尊氏の良い人っぷりは、観応の擾乱や南北朝の混乱を招きました。北条氏はその政争の歴史からドラマでは悪役になりがちですが、日本全図の視点で広く物事を観察すると、その治世中に建武以降に頻発する全国規模な騒乱がなかったことから、優れたManagerだったのかなと思います。
私は多くの人達から、LeaderやManagerになることを期待されてきました。しかし我が人生、その期待には未だ満足に応えられてはいません。誕生日を過ぎて一つ歳を取りました。そんな世間の期待に早く応えられなくてはなあと、より一層努めたいと願う日々です。
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