SAGA-LSで実験

 今週、学生の皆さんは学年末試験に勤しんでいますが、私の方は佐賀県鳥栖市にあります「佐賀県立九州シンクロトロン研究センター」、略称「SAGA-LS」という放射光実験施設で実験です。ゲストハウスに泊まり込みながらです。

 何やるかって? 炭素材料の光電子分光(photoelectron spectroscopy)です。

 一般に、物質に光(電磁波)を当て、その透過、吸収、反射などを測定して物質の化学状態や構造を調べることを、分光学(spectroscopy)と言います。光は波長によって、X線などの放射線からコタツでお馴染み赤外線まで分類されます。波長により物質(含生物細胞)への化学的・物理的・生物学的作用が異なりますので、目的に応じて波長を選択します。レントゲン写真も、広い意味では分光学の一つです。

 光電子分光では、一般にX線と呼ばれている放射線の一種を使います。私は、光電子分光法の他に、レーザーを使うラマン分光法(Raman spectroscopy)を専門にしています。そう、物理・化学・電気の時空の狭間に生きる人間です。

 光の波長に対する透過、吸収、反射などの変化のグラフを、スペクトル(spectrum)と言います。スペクトルの分解能を上げて細かいところまで観測しようとすると、スリットなどで光を絞ります。しかし光を絞ると当然、その強度は弱く暗くなります。

 放射光施設は、シンクロトロンという装置を使って、とっても明るい放射線を生み出し、それを光源として分光学実験をする施設です。電子を加速させてぐるぐる円運動させると、接線方向に放射光が出てきます(※導出は難しいですが、皆さんの電気磁気学の知識範囲でできます)ので、これを光源として利用します。最も有名なものは、兵庫県にあるSPring-8です。ニュースで耳にしたことありませんか? SPring-8は第三世代といって、最高性能の施設です。SAGA-LSは第二世代で、性能は1ランク落ちます。しかし、私の実験は第二世代で十分です。近所のスーパーに買い物に行くのに、フェラーリは要りません。路地や駐車場で傷つけるだけです。ちなみにこの研究の内容は、こんなのです。

 放射光施設は日本各地に点在していまして、九州ではSAGA-LSが唯一のものです。そう、放射光施設はみんなの共同利用施設ですから、予約して実験です。

2F ロビーから見た1F 実験ホールの風景です。窓ガラスの反射像も一部写っています。実験ホールは放射線管理区域なので、法定講習と認証を受けないと入れません。

 卒研テーマに入れたいのですが、今回はTeam鷹林の学生さん達とのスケジュール調整ができず、一人旅立ちました(ノД`) みんなの施設ですから、仕方ありません。Stay tuned!!

 しかしです。やはり実験は自分でやってナンボであり、楽しいものです。私が実験するから、卒研テーマはデスクワークで・・・って、ダメですよね。

測定してます。実験は、デスクワークよりもはるかに楽しいです。しばらくこの方面から離れていたので、尚更。
真空チャンバー内の測定配置です。中央部にサンプルが固定されていて、右向きに向いています。右方向からサンプルに向けて放射光が出ていますが、人間の目には見えません。明るく見えるのは、位置調整しやすくするためと撮影用に照明をつけているからです。実際の測定では消します。

 分光学には、電気磁気学(電磁気学)の他に、化学、量子力学、固体物理学の知識が要ります。化学はともかく、後者2つについては、バンド構造を用いる電子工学が応用の一例になるものの直接的な授業科目はないので、卒業研究でおいおい教えます。ま、やる気と元気な身体があれば大丈夫ですよ。

Views: 36

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA