倹約と殖産

 コロナや世情不安定の只今は、日常のコストにも影を落としています。最もわかりやすいのは、電気代ですね。節制が求められる時世です。ただし、よく考えなければなりません。

 節制とは短絡的に、「清貧」というイメージに繋がります。自らを制することは、一般に良い印象を持たれます。でも果たして、それだけで良いのでしょうか?

 入る、すなわち収入の確保が必要です。けれども、稼ぐということは、儒教的には良いイメージを持たれません。士農工商という言葉にあるとおり、商は最下層ですから。

 とは言っても歴史を紐解いてみると、節制、質素倹約だけで世の中が治まった事例はありません。仁徳天皇の竈の煙のような神話の時代は別として。史上有名な上杉鷹山の改革でも、質素倹約とペアで殖産興業が奨励されています。後者は前者に比べて評価が疎かにされがちですけど。一方で松平定信の寛政の改革は、質素倹約のみを強いて、結局失敗に終わっています。

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夏季休業のお知らせ(8/11~16)

 有明高専公式ページに出ておりますが、

8/11(木)~16(火)

の間、一斉休業となります。

 公的通信(メールや郵便物)のご対応ができかねますので、予めご了承下さい。

 「普段から滞りがちやないか」ですって? そうなんです、最近連絡の量が多すぎて、見るだけで精一杯なのです。まあ、そんな日常です。

時間・空間・お片付け

 世の中には、何かと買いだめをする人がいます。買ったもので、部屋はもので溢れかえります。端から見ると、片付いていません。一つ間違えれば、ゴミ屋敷。「それ、必要?」というものをよくもまあ、溜め込みます。

 そんな人が主張することとしては、「いつか使うから~」や「安かったから~」ということがあります。しかし自分の人生の記憶のどこを探しても、この「いつか使うカード」が発動されたところは見たことがありません。

 子供のカードバトル白熱に眉をしかめ、口うるさく言う大人はいるでしょう。しかしその当人は、自分が「いつか使うカード」を買い溜めることには無頓着です。

 そんな人には、決定的に抜けている視点があります。それは「時間と空間はタダではない!!」ということです。モノで溢れ返させることによって、空間は狭められます。それにより、現在必要な作業ができなくなる場合があります。

 空間が狭められることにより、必要な作業空間が確保できず、時間が余計にかかり、無駄に流れてしまいます。

 そう、いくら購入当時安かったとしても、失われた時間と空間の価値は計り知れないのです。

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教員の過重労働

 最近、教員の過重労働が盛んに議論されるようになっていますね。まあ、私も渦中の人物の一人にはなりますので、多少興味があります。

 単純に労働時間を考えると、給料は安いようです。「ようです」というのは、個人的にはあまり気にしていないから。総額としては社会平均より高く、かつこの有明地域は物価が安いので、生活には困っていません。むしろ、首都圏など都会の人達は大変だなーと思います。

 忙しくても、前途有望な学生さん達と学んでいくことは、結構楽しいものです。企業の品質部門でめんどくさい大人達を相手にするよりも100万倍楽しいです。

 さてさて、過重労働の原因は色々議論されていますが、個人的には「学校の自治」にあるんじゃないかと思っています。学問の独立に基づく自治でして、その自治のために、教員は運営に関する事務仕事、経営仕事も負わねばならなくなっています。「それ、教員の仕事??」というのがあることも事実です。

 「経営や人事や総務etc.のプロを揃えればいいじゃん!?」と、曲がりなりにも民間企業経験のある私からすれば、そう思うのです。教員は、結局突き詰めれば各専門教育のサービス担当なのであって、何でもする必要はありませんし、何でもできるわけではありません。教員は格別に偉いわけではありません。

 ちょっと前、ナントカ会議という偉い先生達の集団が学問の自治に吠えておられました。いや、吠えるだなんて失礼ですね(^_^;)。でもね、社会というのは、偉い先生達だけでは回らないんですよ。

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言葉遣い

 社会で働いている人なら至極当然のことですが、言葉遣いは気をつけます。年長者や地位が上の人だけではなく、下の人にもです。だって明日、下だった人が上に来るかもしれないのですからね。今日の学生さんは、明日の上司かもしれません。

 ただ一般に、学校という文化圏の中では、何故かそれが廃れています。

 自分の人生を振り返ると、中学校から大学までがそうでした。中学校に入ったら、やたら教員の言葉遣いが荒くなったのを不思議に思ったものです。

 そんな環境を受け入れて成長して、大学院に入りました。そうすると、周囲は一変して丁寧な言葉遣いをされるようになりました。大学院生ともなりますと、学生とはいっても一角の研究者として認められたからです。逆に言うと、自身の振る舞いは自身で責任を持たねばならない立場になったという事でした。

 ちょっと話が横道にずれました。言葉遣いというものは、相手をどう思うかではなく、自身が周りにどう見られるかということが重要です。敬語一般にそうですね。言葉遣いは結局、自分を守るためのものです。言葉遣いが荒い人と仲良くなりたい人は、少数派だと思います。人が近寄らない人は、得るものが得られませんね。

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みずほ号立ち上がる

 3月末に東北大学から移設したPA-PECVD2台のうち、みずほ号の再現データが取れました。

 移設してから色々トラブル続きでしたが、3ヶ月ちょっと経てようやく過去と同じデータが取れました。授業の合間を縫って、学生さん達と試行錯誤の日々でした。でも研究って、それが一番楽しいんですけどね。

アルゴン(Ar)雰囲気中と真空中の放電曲線です。

 このグラフを見てニヤニヤしている私は・・・、職業病ですかね。

 この余勢を駆って、かもめ号も行きたいところです。

スポット溶接

 CVD装置の電極をつくるため、スポット溶接をしました。銅線とモリブデン板を溶接しました。

 スポット溶接は、溶接したい金属の箇所に局所的に瞬間的(ミリ秒単位)に大電流を流し、金属を溶解凝固させて溶接する手法です。研究室のスポット溶接機では、上述の組み合わせにはパワーが足りないので、メカニクスコースの実習工場に毎度の如くお邪魔しました。眠っていた古い大型スポット溶接機さんに、起きていただきました。探せばあるんですね~。

スポット溶接機の定格。12000 Aという化け物的なパワーです。
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シリコンウェハーのダイシング

 研究実験に使うため、n-Si(100)ウェハーをダイシング(dicing)しました。賽の目(dice)に切るということです。といっても、ダイシングソー装置などないので、手割りです。

 手割りといっても、空手チョップするわけではありません。瓦を割るのではありません。まず、Siウェハーにダイヤモンドペンで傷つけます。ダイヤモンドペンとは、先端が鋭利なダイヤになっているペンです。ダイヤは硬いので、固体の表面に傷をつけることができます。なお、そのダイヤを盗んでも宝石としての価値はありませんので、悪しからず。

 そして両端を2つのピンセットで持って引っ張るようにして割ると、あ~ら不思議!! (100)ウェハーではキレイに四角に割れます。それは(100)面が四角形の単位になっているからです。

 説明が遅れましたが、(100)はミラー指数面のことです。「n-」とは、n型ということです。いずれも化学結晶のお話ですが、電子工学を学ぶ上では避けて通れません。がんばりましょう。

ミラー指数の説明スライドです。
(100)面の説明スライドです。
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国際会議のお知らせ(2022年8月)

 8/3(水)~6(土)に九州大学で行われる「IUMRS-ICYRAM 2022」(第5回先進材料に関する若手研究者のための材料研究学会国際連合国際会議)という国際会議で発表します。(※( )の和訳は、正式な和訳名がないので自分で考えてみました。)

・8/3(水) 15:45~16:00 K-O3-006 (オーラル): S. Takabayashi, Novel Synthesis of Diamond-like Carbon by Photoemission-Assisted PECVD.

よろしくです。

大雨と真空停電復旧

 大雨どストライクの日の続きです。案の定、高専が停電となってしまいました。朝、事務からメール連絡が来ました。・・・けれど、「むむっ???、停電なのに何故メールが送れるんだ?」と思ったら、我が棟周辺だけが停電でした。

 CVD装置は超高真空仕様でして、真空維持のために24時間真空ポンプで引きっしぱなしです。前日に電源を落として帰ろうかどうか迷いましたが、停電は大丈夫だろうとそのままにしました。しかし、裏目に出ました。

 停電になってしまうと、当然真空ポンプは止まります。止まると、真空度が悪くなるのもありますが、何よりもロータリーポンプのオイル逆流が問題となりますので、早速出勤しました。幸い大雨は小康状態となり、道路冠水も引きました。

 いざ着いてみると、周囲に灯りが点いていまして、停電は早々に復旧していました。装置の真空バルブを一旦全て閉めて、ポンプを再起動し、順にバルブを開放して真空度を元に戻していきました。操作は身体が覚えています。結果、大きな問題はなく、幸いでした。30分ほどで作業を終えて、帰りました。 

 道程にある荒尾駅は不通のため、写真の通り電車が多数待機していました。隣の大牟田駅は広くないので。昨年と一緒ですね。

荒尾駅を望みます。左3番線から817、813、815、817、817系かな。

 そして夕方、天候もほぼ落ち着いた頃、再び高専へと向かいました。翌日の授業準備のために。結局、忙しいことには何も変わりはない一日でした。