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科研費

 科学研究費補助金、すなわち科研費をとりあえず書き終えました。秋と言えば、次年度科研費申請の季節です。文部科学省傘下の日本学術振興会(学振、JSPS)が取りまとめている、研究に関する国家予算制度の一つですね。

 私、英訳でprofessorと言う肩書きが付く准教授(associate professor)なので、研究者でもあります。学生さん達の中には、卒業研究でかかる諸経費は学校から全て必要なだけ出ていると思っている人が多いです。

 「そんな訳、99%ありません!!」です(※多少は出ているので100%にはしません)。

 高専だけ? いや、どこの高専、大学でもそうですよ。

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続きはまた今度

 前回の続きです。ベーキングが無事終わり、PA-PECVD装置が組み上がりました。

 ↓の写真は装置の一部である、イオンゲージ(ionization gauge)です。gaugeとは計器一般を指しますが、ここでは真空計を意味します。イオンゲージは正式には、「B-Aゲージ (Bayard-Alpert hot cathode ionization gauge)」と言います。

イオンゲージの拡大写真。手前2つのカギ(L)型電極の間にあるフィラメントは細くて、拡大しても見えにくいですね。

 真空度(圧力)は真空計で測ります。「そんなん当たり前じゃーん!!」なんではございますが、実は真空度により真空計は複数使い分けなければなりません。と言いますのも、真空計ごとに正しく動作する圧力領域が異なるからです。大気圧(10^+5 Pa)から10^-1 Pa台くらいまでは「ピラニゲージ (pirani gauge)」、10^-1~10^-4 Pa台くらいまでは「ペニングゲージ (penning gauge)」、そして10^-4 Pa台くらいより下は↑のイオンゲージという風にです。今回の装置にも4種類揃っています。えっ? 3つしかないじゃん。ええ、もう一つ、「キャパシタンスマノメータ (capacitance manometer)」という、ペニングゲージとほほ同じ領域ですが、より精密に測定できる真空計を実際の実験条件制御用に備えています。キャパシタンスマノメータという名前は知らない人も多いと思いますが、代表的な商品名「バラトロン (Baratorn)」は有名です。

 さてこのイオンゲージ、測定範囲より高い圧力のときにスイッチONすると、フィラメントが焼き切れて壊れてしまいます。フィラメントのスペアは結構高いので、この業界では「怒られる定番ネタ」の一つです。フィラメントは細くて、↑の写真ではピントが合わずに見えにくいですが、手前の高さが異なる2つのカギ(L)型電極の間に垂直に繋がっています。

 今回新しく計器をセットアップするに際して、採用した在庫品のは切れていたので、新しく付け替えました。しかしこの作業、細かくて慎重を要するので、結構手間がかかりました。

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プラズマCVD装置組み立て中

 有明はまだ雨が続きますね。そんな中、私はただいま東北大学@宮城県仙台市にて、プラズマCVD (plasma-enhanced chemical vapor deposition, プラズマ化学気相成長法)装置を組み立てています。↓の写真がその装置で、昨日組み上がりました(※正確には、組み上がる直前の写真)。

 中央のチャンバー内に基板を入れて、内部を真空にし、その後適当なガスを適当な圧力分入れます。そして放電させてプラズマを生成します。プラズマ中でガス分子は分解されます。分解されたガス分子は基板上に堆積して、膜を形成します。

 作っている装置は、「光電子制御プラズマCVD (PA-PECVD)」というプラズマCVDの一種で、オリジナル装置です。これでダイヤモンドライクカーボン(DLC)という炭素膜をつくって、その物性を評価する研究を行っています。

 電気に何の関係があるかって? プラズマは、高電圧放電の応用の一つです。また作られるDLC膜は誘電体材料であります。DLCは、ハードディスクや金型の表面コーティング材など、既に幅広く用いられている材料です。私はDLCの誘電性に着目して、まあ、いろいろやってきたわけです。

 電気だけでなく、物理や化学の知識も要ります。色々勉強できますし、多方面に顔も利くようになりますので、研究内容を気に入ってはいます。

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批判すること、されること

 研究活動をしていく際、多分どうしても避けられないことになると思いますが、批判活動をせざるを得ません。すなわち、「先行研究の○△という点が不足、欠点、ないし間違っている」ということです。

 高校時代にある先生が仰せられたこと、「評論家になるな」という言が、今もっても頭に残っています。批判に終始せず、自らの行動をもって示すことです。

 研究活動で、全く未知のフロンティアを自由に進めることはまずありません。必ず先人の活動があり、それを乗り越える形で自らの路を作ります。

 古人曰く、「巨人の肩の上に立つ」です。

 乗り越える懸命さは、時に批判という活動に繋がります。先人には先人の壁があり、それは時に答えを知っている後世の私達には低く見えるかもしれません。その際には、自分がもし同じ立場だったら乗り越えられたかと、厳しく自省しなければなりません。

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Fourier級数とFermi–Dirac分布とこの世の成り立ちな自由な研究

 人類の歴史上で賢い人間を挙げろと言われたら、私は2名の人物を推します。Faraday (ファラデー)とFourier (フーリエ)さんです。

 ファラデーさんは、電気磁気学(電磁気学)がもたらす物理現象を一つ一つ実験的に明らかにしていった人です。電磁気学は後年Maxwell方程式でまとめられたように、Maxwellさんが電磁気学の最終的な勝利者と言えなくもないですが、その基礎を造ったファラデーさんの実験力と観察力にはそれ以上に脱帽です。

 一方のフーリエさんは 、その名を取ったフーリエ級数で有名な人です。フーリエ級数曰く、「あらゆる周期関数は、三角関数の級数和で示される」です。なーんてこと思いつきます? その発想力には脱帽です。

 カクカクした矩形波をフーリエ級数で表すと、

という式になります。これをグラフソフトで描いてみます。愛用のソフトはIgor Proです。∞までの和をとるのは不可能なので、k = 15までに留めると、

という形状になります。

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国際会議のお知らせ(11/2 update)

 ”International Symposium on Dry Process” (ドライプロセスに関する国際シンポジウム)という11月18-19日に行われる国際会議で、共同研究者が発表することになりました。その連名末席に名を連ねることになりました。九州大学 古閑 一憲先生のグループとの共同研究です。

ポスターセッション: P-32

S. H. Hwang et al.

Reduction of compressive stress of hydrogenated amorphous carbon films by inserting carbon nanoparticle layer using plasma CVD

 ご時世に従い、オンラインです。

 以下ちょっとした業界説明まで。

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音楽聴かないで脳みそフルパワーと人の境目

 連休中です。しかしやるべき仕事は山積の山積です。みんながオリンピック見ている間に、一つ一つ片付けておかないとね。

 翌日が休日だと夜更かしして良いので、一眠りした後にふと目が覚めたら、机に向かって仕事します。静かな夜です。

 脳みそをわりと使う仕事をしています。特に脳みそフルパワーを使うのが、「研究調書」と「研究論文」です。ナントカDを飲んでファイト一発!!、してから向かうこともあります。値段の高いものはやはりそれなりに効くので、特にレベルを上げたい場合は買ってきます。

 さて世の中、今も昔もですが、音楽聴きながら勉強している人がいます。「器用だな~」と感心します。音楽が嫌いなわけではありませんが、特段聴く趣味はありません。若い頃にはウォークマンやラジカセを買ったことがありましたが、何せ聴く趣味がないので、実用もあまりせず単なるメカ趣味に終わり、周囲に譲りました。

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卒研実施中!!

 5年生の卒業研究やっています。お隣メカニクス(M)コースの工場にお邪魔して、材料加工しています。

 Eですか?

 Eですよ。

アルミニウムのインゴットを切断しています。
必要な分、切り出せました。
別のアルミニウム板を削って、精密成形しています。

 実際に手を動かしてみることで、物の有り難みが分かります。色々試行錯誤して考えていると、アイディアと夢が膨らみます。夢のある人生が、一番幸せな人生です。

 お金で何でも手に入れられ、解決できる世の中ですが、お金に頼りすぎることは、退化を意味します。ボタンを押せば望むものが手に入りますが、ボタンを押すことなら原始人だってできます。

未だ木鶏たりえず

 世の中には、「俺すごいんだぞ!!」的な人がわりといます。話す言葉の節々に満ち溢れています。「あーそーですか、アナタの視界の世界ではそりゃアナタが一番ですよねー」、とは内心で。

 私、こういうことに感受性が高いんでしょうか。そこそこ学歴あることもあって、昔からよく挑んでこられますね。いや、別に興味ないんで、ご高説結構なんですけど・・・。

 私を倒しても自慢にはならないですよ。ククク・・・、私は四天王の中でも最弱・・・。残り三名が誰かはご想像にお任せします。

 さて高等教育機関に居ますから、私にとって教育と研究は車の両輪です。どちらが欠けてもなりません。ここではちょっと後者に着目しましょう。

 研究者は世界中を相手にします。ですから、「俺イチバン!!」なんてことを思える人は、まともな研究者の中には一人もいないと思います。イチバンなのは、神さまです。

 それに、イチバンて大変ですよ。その先の道は自分で切り拓いていかないとならないのですから。それも後ろから追い上げられるのを気にしつつ。いやー、大変だ。

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大井さん

 前職で同僚だった大井 克己氏を研究室に招きました。氏は無線の専門家で、前職時代に氏から導波管やアンテナなどの通信技術を教えていただきました。

 研究室学生達が卒業研究で行っている導波管の話、70歳を超えた今でも人工衛星プロジェクトに参加している話、社会で働きそして勉強を続けるという話など、色々な話で盛り上がりました。

 コロナが落ち着き涼しくなった頃に、今度はゆっくりとお話できたらと思います。

大井さん(中央)と研究室学生達。人工衛星の話で盛り上がっているところです。大井さんは生涯現役で活躍されておられます。

EnterとJoin

 人間は組織的な動物です。必ず何らかの組織に属しています。小さいのは家族から、大きいのは国家まで。複数に跨がって。学校や会社など中規模の組織に参加することを表す英語の動詞には、enterとjoinがあります。例えば、学校に入学するときはenterを使い、部活に入るときはjoinを使います。じゃあ会社に入るときは? 答えは、joinです。

 権威ある辞書であるOxford English Dictionaryに依りますと、

enter: to become a member of an institution

join: to become a member of an organization, a company, a club, etc.

という意味となっています。どちらも似たようなものですね。でも、enter schoolとは言いますが、enter the schoolとは言いません。join the companyとは言いますが、join companyとは言いません。theがないのは、具体的な枠のない「機能」を表します。theがあるのは、具体的な枠のある「入れ物」を表します。enter the schoolを敢えて使うなら、それは校舎の工事業者さんなどか言うことですね。学校は工事現場の一つに過ぎないということです。

 つまり、enter schoolは学校教育(という機能)に参加する、すなわち入学するという意味になるので、受け身の学生の立場となります。一方、join the comapnyは会社という人の集団に参加するので、自身は対等なメンバーの一員となります。

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論文出してました

 ちょっと時間が遡りますが、論文出しました。OPEN ACCESSなので皆さん読めます。

Processes, 2021, 9, 2

 九州大学大学院 システム情報科学研究院 古閑一憲教授との共同研究です。こちらもこれから発展させていく予定です。まあ、コロナが終息すればなんですけど。

 本科ではプラズマってあまり触れないんですけど、電気の世界にはこんな地方もあります。

よろしくです。