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東北大学出張中

 有明高専に移設予定の光電子制御プラズマCVD (PA-PECVD)装置2台の調整とテストのため、今週は東北大学@仙台に来ています。

 今回は研究室の4E学生2名を連れまして、彼らに作業経験と放電実験の実習をしてもらっています。真空工学、表面科学、放電プラズマ工学、量子力学、量子化学などなど、新たに勉強すべきことが山積ではありますが、身体を動かし手を動していけば、自ずと身についていきます。

放電テストしています。チャンバー内部奥で紫色に光っているのが、窒素(N2)の光電子制御グロー放電(PAGD)です。
拡大します。PAGDの特長である、位置制御されたグロー放電が見て取れます。一般的なグロー放電(蛍光灯の中など)は、放電が全体的に広がるので面積制御が困難ですが、PAGDは放電面積をキッチリ定めることができます。
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図書館と本

 研究室の学生さんに連れられて、校内図書館へ行きました。卒業研究に関係する真空工学の本を探しに。図書館に行くのは有明に来て3回目です。ほとんど縁がありません。

 本校では真空工学に関する本科授業科目はないですし、館内蔵書は開講授業の教科書に近しいものだけだろうなーと思っていたら・・・、おおーっ、魅力的な蔵書に溢れているではないですか!! スイマセンでした。反省します。

 書棚を眺めていると、時間が経つのを忘れます。図書館は良いものです。

 ただし私、図書館で本を借りるのは嫌いです。学術論文雑誌を除いて、本は「自分で買う」ことをモットーにしています。論文雑誌の場合は、必要な論文はその号内の一報だけなので、一々買い揃えていてはコスパが悪いです。

 「必要なときに、必要な本がすぐ手元にある」状態にしておきたいので、魅力的な書籍は買い揃えます。

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オンライン同窓会と研究

 今年の大学院時代の研究室の同窓会は、オンラインでありました。ご時世のため、大学に多くが集まって行うという形式は取れませんので、Zoomにて。コアなメンバーだけが集まった小さな研究会みたいになりました。

 互いにの近況(= 研究進捗の話など)を話すだけで1時間半が過ぎ、結局飲み食いするわけでもなく議論だけで4時間近くがあっという間に過ぎました。

 要するに、研究会です。正常な世の中でも、結局夜明けまで話するかなぁ。

 特に私は今や化学の世界を遠く離れておりますので、とても魅力的なお話ばかりでした。正に隣の芝生は青いです。

 フラスコを持たず、化学合成法を考えなくなって割と年月が経ちますが、あ゛ー、化学実験したいーと思いました。

 いやいや、Eで頑張りますよ。真空ドライプロセスです。

 その環境は与えられるものではありません。今や自分が創っていかなければならない立場です。頑張ります。

 研究室で研究するって、一番楽しいことなんですよね。楽しさは、

研究 >>>>>>>>>>>>>>>> 学生実験 >>>>>>> 座学

であり、世間の評価基準もこの順です。でも学生さん達を見ると、多くは価値基準を、

座学 (テストの点数) >>>>>> 学生実験 >>>>>>>>>>>>>>>>> 研究

と置くんですよね。いやはや、摩訶不思議でなりませんな。

 研究であれ何であれ、自分の現在と未来を語れるって、この上なく幸せなことだと思います。

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高等教育とテストと卒業研究

 本日から後期中間試験です。試験すなわちテストというものから、高等教育について考えていきます。

 個人的には、4年生までの試験はガチガチに行いますが、以降の5年生と専攻科では比較的楽にするようにしてします。もちろん、後者の方が内容は高度ですよ。その理由は、決して手を抜きたいわけではなく、「高等教育をしたい」からです。

 有明高専では、4年生後期から卒業研究が始まります。一般には5年生になってからなので半年早いのですが、これは素晴らしいことだと思います。それは、「卒業研究が高等教育の象徴」と思うからです。

 一般に、授業形態は大きく分けて、3つあります。

・卒業研究
・実験、実習
・座学

 座学は、後期中等教育もしくはそれ以下と思います。要するに高校です。何故なら、学ぶというより、座って「学ばされる」からです。高等教育機関が高等教育機関たり得る根拠の一つは、卒業研究すなわち研究活動があるからです。実験、実習は両者の中間です。

 高専(高等専門学校)と同年代の若者が集う学校には他に、私立専門学校と厚生労働省所管のポリテクカレッジがあります。後者には馴染みがない方も多いかもしれませんが、工業職能訓練を主眼にした専門学校です。高専はこの中で卒業研究を行うことができ、そのため他二者に比して社会的評価が高いです。

 研究というものは、テストやナントカ資格とは違って形のないものであり、点数評価しにくいものです。ですから後回しにされる場合があります。しかし、座学や資格の試験勉強、ましてや落とした単位の取得への勉強に卒業研究を削るのは、「本末転倒」です!! 高等教育を自ら否定して、自らをわざわざ低めて一体何がしたいんでしょうか?

 研究活動というものは、決して専門バカをつくるためのものではありません。未知への探求を通じて、「考える力・まとめる力・切り拓く力」を、時間をかけて養っていくものです。社会で評価される能力はこれらの力であって、決してテストで100点を取る力ではありません。座学や資格は、高等教育たり得る研究活動・探究活動の土台にしか過ぎません。

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半導体不足と較正キット

 ネットワークアナライザ(ネットアナ)の較正キットがようやく届きました。約20万円するお高いものではありますが、これがなくては何にもできないので、OHTANI選手もビックリのVIP & MVP扱いです。

 でもでも、昨今Newsでよく聴く半導体不足が納期に響いたようで、1ヶ月ほど待ちました。一日千秋、長かったです~。

 そもそも、どんな計測機器にも較正(calibration)、つまり0を0と定めておくことは必要です。身近なテスターやオシロスコープにも何にでも要るのですが、日常使う測定周波数はkHz台と低いですし、較正作業というものは手間がかかりますので、パスされます。

 しかしながらネットアナのようなMHz・GHz帯を守備範囲とする高周波計測機器では、機器から対象となる被計測デバイス(DUT, device under test)までの周辺配線の影響が大きいので、各使用前にキッチリ較正しないと正確な計測が不可能となります。

 難しく言いますと、リアクタンス成分(jX)の影響が、周波数が高くなると大きくなってしまうということです。

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吉田学術教育振興会

 11/18(木)に、財団法人吉田学術教育振興会の令和3年度学術奨励金の贈呈式に行ってきました。本振興会は、久留米の大電株式会社創業者である吉田直大氏により昭和60年に設立された歴史ある財団です。本奨励金は、福岡県内の大学、工業高等専門学校、ならびに公立の研究機関等に在籍する人を対象にしています。

 今回は、私を含めて5名が受賞しました。有明高専からは、平成17(2005)年のI 原 武嗣先生以来16年振りの受賞となりました。

 贈呈式では、授与の他に研究内容のプレゼンテーションを行い、互いに議論を深めました。帰路でも意見交換をしました。

 受賞の栄誉に恥じぬよう、研究を頑張っていきます。なお詳細は、11/27(土)付の西日本新聞 筑後版にも載りました。

式場の大電株式会社本社玄関です。緊張しました。
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2期生配属されました

 研究室の第2期生である4E学生さん達(創造工学科3期生)5名が研究室配属されました。宜しくなのです。

 高等教育は、研究室配属されてからが本番です。それまでの生活は序章であり、成績は仮の姿です。

 それまでの成績は特に気にしません。丸暗記で要領よくこなした100点よりも、地道に不器用に苦労して得た60点の方がはるかに価値があるからです。テストなんてものは、正解が既に分かっていることを時間内に効率よく解くことを求められるだけの、クイズの一種です。世の中には、時間をかけないと分からないことや、またいくら時間をかけても分からないことばかりです。クイズ王が世の中を救いますか?

 例えば、電気磁気学で本当に必要なものはMaxwell方程式ですが、これを解くのは時間がかかるので試験問題は作りにくいです。そう、テストは必要悪でしかありません。

 研究室配属されてから大きく成長する学生さんもいれば、その逆もあります。じっくり考える研究活動は、大器晩成を引き出します。

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九州・山口プラズマ研究会

 11/6(土)・7(日)に長崎県佐世保市にて、「第37回九州・山口プラズマ研究会」という研究会に参加、講演してきました。九州と山口県のプラズマ研究者の集まりでした。 中国地方のセンター広島県出身の立場からすれば、「山口取るなよ~」ですけど。

https://annex.jsap.or.jp/kyushu/sympo/sympo_211106.html

 コロナで会議関係はオンラインばっかりだったので、通常の口頭講演は久しぶりでした。まあ、毎日授業で90分しゃべってはいますが。

 佐世保へは、鳥栖駅まで出てから特急に乗り換えていきました。生まれたときには新幹線は既にあり、広島県には在来線の特急はなくなっていました。そのため在来線特急に乗ることは、結構楽しみなのです。

鳥栖駅で「特急ハウステンボス & みどり」号に乗ります。
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研究と人気

 これまでの研究人生、「電気化学」とか「プラズマ」とか、学際的な分野を渡り歩いてきました。いずれも従来からの伝統的な自然科学分野の縦割りでは、分けにくい分野です。そしてこれら分野に共通するのは、「人気がない」ということです。

 偏屈な人でない限り、化学科の人は化学、物理科の人は物理、電気科の人は電気、というように、各科分類が容易にイメージできる研究分野が人気です。

 高等教育は、研究室に入ってからの生活が本番です。クラス単位の座学は序章でしかありません。ただし研究分野の選択は、その序章の段階で行われます。ですから研究分野によっては、それまで学んだことのないようなことがたくさん出てきます。

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教材と研究

 教材は全てオリジナルで作っています。教科書は一応指定していますが、これは主に最終確認と自習用です。最終確認というのは、私自身が誤って理解していないかを確認することです。自習用とは学生さんので、私の伝達法だけでは理解が偏ってしまうかなと恐れるからです。高等教育は高度な分、教授法も千差万別です。

 初等教育、たとえば1 + 1 = 2というのは、誰が教えても大差ないと思います。しかし高等教育となり、内容も高度になってくると、上述のように教授法は千差万別ですから、教える側の力量が効いてきます。何を教えるかよりも、「誰が教えるか」です。

 力量がないと、教科書の字面だけを追って授業することになります。教科書というのは、人類が長年に渡って積み重ねてきた知見をコンパクトにまとめたものです。人類は成功よりも失敗を多く積み重ね、その失敗を都度乗り越えてきたことで、現代の高度文明があります。

 教科書は、失敗をほとんどカットして、成功事例のみを集めたものです。皮肉な話ですが、基本的にそれだけを読んで真に理解できるようにはできていません。失敗せずして成功することなんてないのですから。失敗事例まで組み込んでしまうと、分野によっては、教科書の厚さは富士山よりも高くなるかもしれません。

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佐賀県工業技術センターでラマン分光

 夏季休講最終日の本日は、佐賀県工業技術センターラマン分光(Raman spectroscopy)測定に行きました。夏季休講中といっても、教員はぜーんぜん休みではないのは先に述べた通りです。

 先日SAGA-LSで熱処理&測定した試料を、今度はラマン分光測定です。SAGA-LSで行った光電子分光は、対象原子と結合する原子(主として第一隣接原子)間の結合エネルギー(binding energy)を測定し、その変化から対象原子の化学結合状態ひいては試料の化学構造を考えていくものでした。

 これに対してラマン分光法は、もっと大きなスケール、すなわち対象分子やその集合構造の幾何学的対称性から化学構造を考えていきます。

 どちらも分光法(spectroscopy)というくくりでは一緒ですが、試料に与えるエネルギーとその結果出てくるエネルギーの大きさが違います。専門的に言いますと、電子励起と振動励起の違いです。各測定法には長所もあれば短所もありまして、一つの測定法だけでは分からないことや見えないことがありますので、複数の手法を用いて複眼的に研究を進めていくのです。

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