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ISO9001:2015と教員活動

 昨夏、財団の報告会である質問をされました。「高専にいて何故研究成果が出せるのですか? 心がけていることは何ですか?」と。一字一句の記憶が定かではありませんが、問われた内容のベクトルは間違っていないと思います。

 とっさに「学生Firstです!!」と答えました。

 企業人、特に製造業に携わる者なら誰もが知るISO9001:2015において第一に求められているのは、「顧客満足」です。これを学校の視点から言うと「学生満足」となります。私は常に、”What is the best for students?”を基点にFMEA (Failure Mode and Effect Analysis)を回しています。

 一方でISO9001:2015は、「利害関係者のニーズ及び期待の理解」も求めています。ここで利害関係者とは、保護者であり、将来学生達を受け入れる社会です。これは、学生満足に対するカウンターパートであり、学生指導へと繋がっていきます。学生指導は、時に学生達へ厳しい形となり得ます。

 「学生満足」と「利害関係者のニーズ及び期待の理解」ががっちり組み合った土台の上に、教員活動が成立すると思っています。ただ世の中を見ると、後者に寄りすぎている感が否めませんね。そうなってしまうと、教員活動のベクトルも自ずとずれていきます。

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次世代半導体デバイス価値創造特別講演会

 2/22(木)、九州大学 伊都キャンパスで行われた「次世代半導体デバイス価値創造特別講演会 “3 次元実装時代のキープロセス/CMP の基礎と応用技術を展望する”」という講演会に行ってきました。九州大学システム情報科学府附属価値創造型半導体人材育成センター近藤 博基教授主催の講演会でした。近藤先生には日頃大変お世話になっております。

 先立って応用物理学会 九州支部経由でメール案内が来て、何となく惹かれるものがあったので参加してみました。縁のない分野ですが、何となく。

会は午後からなのでお昼時に九大に着きました。そういえば、入試なんですよねー。
まずは学食でお昼ご飯。これで520円はさすがです。
食後にヤクルト1000です。健康第一です。
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春休みです

 2/20(火)は終業式でした。来月15日の卒業式を挟んで、4月初めまで春休みです。

 世間一般の認識では、教員のバカンス期間と思われるかもしれません。いえいえ、研究の書き入れ時です。高専の授業は密ですので、開講期間中の研究活動は何かと縛られます。授業のないこの長期休み期間中に如何に努力し進めることができるかで、以後の成果が決まります。研究室としても、学生さん達としても、私としても。プロ野球のキャンプと同じです。

 短期的には来月末の学会へ向けての仕上げです。その他、出張実験目白押しです。

書き入れ時です。
解析も。

論文出しました

 日本表面真空学会発行の同学会誌「表面と真空」2024年2月号に下記論文を出しました。同号は「プラズマが誘起する表面反応の制御による膜作製」という特集号で、企画された福岡大学 篠原 正典先生に招待いただきました。

鷹林 将, 高桑 雄二, “光励起プラズマによるダイヤモンドライクカーボンの精密成膜とその応用”, 表面と真空, 67, 59-64 (2024).

 東北大学 名誉教授 (多元物質科学研究所)の高桑 雄二先生との共著です。前々職である東北大学 電気通信研究所時代に多元物質科学研究所 高桑研究室と共同で行った仕事です。続く会社員時代においてもその成果を原著論文として出し続けました。今回はそれらのまとめ論文で、有明高専での活動を通じて最近至った考えも新たに織り交ぜています。

よろしくです。

博士論文公聴会参加

 2/9(金)、岡山理科大学 フロンティア理工学研究所 中谷 達行教授研究室の大学院博士後期課程学生である今井 裕一さんと福江 紘幸さんの博士論文公聴会に参加してきました。中谷先生には20年来お世話になっており、人生の恩人の一人です。今井さんと福江さんにも同じく長年お世話になっており、特に福江さんには深く共同研究の繋がりがあります。

 博士論文公聴会とは、博士後期課程を修了して博士号を得るために必要な、いわゆる卒論発表会の一つです。ただし、名前が「公聴会」と別名になっているように、修士以下の発表会とは全く別の厳しいものです。時間は一般的に発表40分・質疑20分の計60分です。修士では長いところでも15分・10分だと思いますから、公聴会は倍以上と格段に長くなっています。この長さに対応するためには、事前に修了要件ともなっている学術論文を数報出版しておかないとなりません。つまり、公聴会開催自体へ辿り着くのもまた非常に厳しいものとなっています。

 本科卒業で准学士号、専攻科修了もしくは編入先の大学卒業で学士号です。その後どこかの大学院へ進学して、2年で修士号、さらに3年で博士号です。ただし、3年で博士号が取れる保証はありません。授業単位だけを揃えた「満期退学」では、博士とは見なされません。

 ちなみに私の時はどうだっかというと、人生で初めて「精根尽きる」を実感しました。質疑では初っぱなに「その研究意味があるの?」という大谷翔平投手顔負けの剛腕ストレートが飛んできて、窮したものです。その後の打ち上げでは、もう声が出ませんでした。博士後期課程から研究室を移り、核となるデータが出たのが2年生(D2)の10月です。今でもその驚きを覚えています。それから残り1年半で要件であった第一著者3報を仕上げました。100%出し切ったと言えます。

 このように、公聴会をくぐり抜けて博士号を取った人には、高い社会的地位が約束されます。私もその苦労を身に染みて知っていますので、博士には敬意を払います。日本ではまだまだですが、海外で”Mr. Takabayashi”と”Dr. Takabayashi”では扱いが雲泥の差です。

 日本の世の中では大学名でマウントを取ってくる人が多数いますが、博士の立場からすれば全く馬鹿馬鹿しいものです。博士号を得ているか、得ていないかだと思います。

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原著論文投稿しました

 原著論文を投稿しました。「原著」って言うのはオリジナルな論文のことで、まとめ(review)論文でないものです。苦節4年、高専へ来てからやっと投稿できました。原著論文が出ないっていうのは研究者として致命的であり、研究者の仲間内からも、「鷹林は仕事してんのか!?」、「鷹林は准教授になってダメになったな」という具合に叱られる始末でした(ノД`)

 特に5年担任の今年度は、日々の「もう無理・・・」との戦いでした。そう、高専での一本の論文は、大学のそれの何倍もの価値があります。何かと言い訳をつけて、書かない(書けない?)人には分かりませんけどね。

 といっても、まだ投稿しただけで、これから査読プロセスが始まります。論文投稿した人なら誰しも、「この論文はバッチリ通る(受理される)」と思うものです。まあ、世の中そう甘くはないのですけど。でも、ちょっと胸のつかえは取れてホッとしています。

苦節4年です・・・。
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∩(´∀`∩) 第27回(2023年度)応用物理学会九州支部学術講演会発表奨励賞受賞!! (∩´∀`)∩

 先立つ11/25(土)・26(日)に九州大学 伊都キャンパスにて開催された「2023年度応用物理学会九州支部学術講演会」において、本研究室5Eの内藤 陽大君が、発表奨励賞をいただきましたっ!!

\(゚▽゚=))/…\((=゚▽゚)/

 対象発表は、

氏名: 内藤 陽大
講演番号・題目: 25Bp-7・光電子制御プラズマによるグラフェンの構造制御 (I) ~ ラマン分光解析 ~
共著者: 田中 修斗1、福田 旺土1、山口 尚登2、小川 修一3、高桑 雄二4、津田 泰孝5、吉越 章隆5、鷹林 将1
(有明高専1、ロスアラモス国研2、日大生産工3、東北大マイクロ研究開発セ4、日本原研5)

です。

エネルギーコース版です。

有明高専公式版です。

刺さる言葉

 昨年末のブックハンティングで得た本が、まとめて図書館に届きました。同時に個人的に併行購入した分も届きました。そのうち、

について述べたいと思います。

 ハンティング中何となく目に留まった本で、当初の計画リストにはなかった本ですが、パラパラめくったその先で、とある言葉に突き刺さりました。しばらく動けませんでした。

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∩(´∀`∩) 第二種電気工事士試験合格しました!! (∩´∀`)∩

 国家資格である第二種電気工事士の試験(令和5年度下期)に合格しましたっ!! 筆記試験と続く技能試験をクリアしました。手続き後、正式な免状交付となります。

 研究設備に関する電気工事のための仕事目的が半分、興味が半分でした。その上で、学生の皆さんと同じ土俵に挑むことで、教員としての理解を深め、資質を向上させたいというのもありました。 

学会のお知らせ(2024年3~5月) (1/24 Update!!)

 2024年3~5月の学会参加予定です。

  • 第71回応用物理学会春季学術講演会
    • 3月22日(金)~25日(月) @ 東京都市大学 世田谷キャンパス (東京都世田谷区)
    • 3月22日(金) 15:45~16:00 22p-12G-5 (オーラル): 内藤 陽大(5E), 加藤 直樹, 渡辺 貴之, 鷹林 将, “光電子制御プラズマの集光機構”. (※田辺工業(株)との共同研究, 関連特許出願済み)
    • 3月24日(日) 13:00~15:30 24p-P02-4 (ポスター): 福江 紘幸, 小佐野 芳寿, 鷹林 将, 岡野 忠之, 黒岩 雅英, 國次 真輔, 太田 裕己, 米澤 健, 中谷 達行, “HF-HiPIMS法を用いたDLC膜の二次元ラマンマッピングによる炭素構造モデルの探索”. (※岡山理科大他との共同研究)
    • 3月24日(日) 13:00~15:30 24p-P02-5 (ポスター): 小佐野 芳寿, 福江 紘幸, 鷹林 将, 國次 真輔, 今井 裕一, 中谷 達行, “AC-HV-CVD法を用いたDLCラマンスペクトルの5ピーク分離解析における非線形最小二乗法の適用”. (※岡山理科大他との共同研究)
    • 3月25日(月) 14:15~14:30 25p-12H-4 (オーラル): 野田 浩矢(5E), 内藤 陽大(5E), 山本 圭介, 鷹林 将, “窒素ナノドーピングダイヤモンドライクカーボンの合成とその電気特性”. (※九州大学との共同研究)

KOSENでの研究活動

 卒業を控えて5年生の担任業務も大方落ち着いたので、目下、学術論文を執筆しています。KOSEN(高専)に着任して4年、経験のない生活に慣れることや、多くの授業準備、そして研究室の立ち上げなどで研究活動が疎かになっていました。幸いにも共同研究先に恵まれて論文は出せていましたが、最貢献者たる第一著者としての論文が出せていませんでした。論文は、第一著者であってこそ意味があると思っていますが、その自負が果たせていませんでした。多忙さも後で振り返ってみれば、時間の使い方が悪かったなと反省するばかりです。

 この1年、研究室学生達が各学会で受賞し、華々しい活躍をしてくれました(これこれ)。この上ない喜びです。さらに旧秋には優秀な4年生達が研究室を選んでくれました。上級生達も、実験や後輩への指導を任せられるように育ってくれましたので、時間に余裕が生まれ、好循環となってきました。有り難いことです。その分、自らを磨いていかなければならないことに重みを感じています。時間的余裕は、学生達から与えられた試練とも言えます。

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論文出しました

 岡山理科大学大学院の福江 紘幸さんと同学フロンティア理工学研究所の中谷 達行先生との共同研究成果が論文になりました。

Hiroyuki Fukue et al., “Raman spectroscopy analysis of the chemical structure of diamond-like carbon films deposited via high-frequency inclusion high-power impulse magnetron sputtering”, Diamond and Related Materials, 142, 110768 (2024).

 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)のラマン分光解析へケモメトリックス(Chemometrics、計量化学)的手法を取り入れたものです。私のマニアックな同解析法を広く一般化できるようにしていだきました。第三者(福江さん)がトライすることで、解析法の実証を試みていただきました。

よろしくです。