ベーキング(2/2)

 半日のベーキング後、1日かけて装置を冷ましました。放置しただけですが、真空は熱伝導しにくいので、装置チャンバー内部が室温まで冷えるのに1日かかります。魔法瓶と同じ仕組みです。

 そして数日後、装置制御機器を収めたラックの屋上に置いた真空計を見てみると、10-6 Pa台を示していました。ベーキング前が10-5 Pa台でしたから、1桁下げることができました。10-5 Pa台でもCVD装置としては十分ですが、研究用ですので真空を極めます。これより下は、頻繁にフタを開ける装置としては難しいです。良い感じです。

かもめ号は奥です。手前はみずほ号。共にラック屋上に置いた真空計が10-6 Pa台を示しています。
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ベーキング(1/2)

 今週初め、5月に引き続いて再度CVD装置整備のため、東北大学から高桑雄二先生にお越しいただきました。今回は、かもめ号のベーキング処理を行いました。

 真空装置において、高い真空レベルを求めようとすると、そりチャンバー内壁に付着している分子の挙動が最終的に影響してきます。特に水分子は取れにくく、そのままだと真空ポンプでいくら引いても真空は良くなりません。

 というわけで、真空チャンバー全体を真空引きを継続しながら加熱して、付着分子を脱離除去します。この作業をベーキング(baking)と言います。ベーキングをよく効かせて分子を脱離させることを俗に「チャンバーを枯らす」、できた状態を「チャンバーが枯れている」と言います。

 真空チャンバーはステンレスでできており、また内部を覗くためのガラス窓も付いています。これらは熱伝導率が悪いので、全体をアルミホイルで包んで、ヒーターによる加熱が満遍なく行き渡るようにします。真空装置に縁の薄い方がこのように装置がアルミホイルだらけになっている状態を不思議に思われますが、その理由はこのベーキングのためです。

高桑先生のご指導の下、学生さんがかもめ号をアルミホイルで巻いています。
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難しい学問

 申すまでもなく、教員は学問を教授するのが仕事です。わかりやすく教授するのは、腕の見せ所です。しかし高等教育ともなると、内容も高度になり、一筋縄ではいきません。誰しも暗中模索、試行錯誤しています。

 学校は、時間をかけてその難しい学問を修めるところです。難しさを克服するには、自分で乗り越えなければならない壁が存在します。教員はその幾分かのサポートはできますが、最後は自身の力です。

 「私が分からないのは、教えるお前が悪い」という人達がいます。私が歳を取ったのか、そんな人達が昨今多い気がします。しかしその人達から、自分の努力を聞くことはありません。

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後手復活

 最近、何かと後手に回ることが多いです。先手先手をモットーとしてきたのですが、気がついたら手遅れだったということが増えてきたようです。歳かな~と思いつつ、忙しいからだよね~と慰めつつ。

 ただし、「後手に回って不利になった状況を、どのようにして将来に上手く活用していくか」ということには長けてきたような気がします。

 人生、失敗や後悔は無数にあります。それらを一々後悔しても、タイムマシンが解決してくれるわけではありません。それよりも、目下得られた状況をどう活かして、自分の優位を創り出していくかです。

 さて、モンスター飲んで、また一仕事です。ただし、モンスターは中一日以上空けましょうね。

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リアクタンス

 インピーダンス(Z)の虚数成分は、リアクタンス(X)です。Z = R + jX ですね。Xは2種類あり、コイルの場合はXL、コンデンサ(キャパシタ)の場合はXCと表記されます。これらは皆さんよくご存知ですね。

 さて、XCについて考えてみます。今までの人生、

XC ≡ -1/ωC ・・・(1-1)

としてきました。ωは角周波数、Cはキャパシタンスですね。

 しかし電気工学では、

XC ≡ 1/ωC ・・・(2-1)

と、負号をつけない方が主流のようです。知りませんでした・・・。

 英語のwikiは(1-1)メインで書いていますが、日本語のwikiは(2-1)メインです。英語の方が詳しく、参考文献も充実しています。時間があったら、文献を読んでみます。でも、時間・・・ないんですよね。次から次へと仕事が降ってきまして。

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教員としての意識

 近年の高専は「高度化」と称して、研究レベルの向上、それに伴う教育の更なる向上を図っています。創造工学科2年次のコース選択に際しての学生アンケートの中にも、研究力について問いたいという内容のものが数多く含まれています。

 高度化は、従来の高専業務の上にプラスされるものです。ですから研究を深めていくことは、教員にとっては大きな負担になります。そのため従来の教育・管理システムの改善が急務ですが、なかなか事はすぐに変えられるものではありません。そこで自分のできる範囲で、業務を整理・効率化し、研究の時間を創っています。もちろん、このような整理や効率化は授業等の従来業務を決して疎かにするものではありません。「小人閑居して不善を為す」です。忙しいときほど、時間は創れるものです。

 鷹林研究室は「世界で闘える研究室」でありたいと思い、時間を割いています。学生さん達はせっかく研究室で多くの時間を割くのですから、彼らを世界に羽ばたかせたいと思っています。それは何も慈悲ではなく、私にとっても大いに勉強になることです。

 メインのCVD装置も移設できましたので、実験研究に割く時間が増えて勤務時間は延びました。夕方になると、教員室での事務仕事はさておき、研究室に籠もって何かしています。最近では、21時までには帰宅しようと思うスケジュールです。朝は8時前に来ますから、えーっと、13時間労働ですかね。いやいや、歳のせいか朝は4時くらいに目が覚めまして、リモートワークで何かもしています。学生さん達や事務職員さん達へのIOT連絡時間がそんな時間帯になり、彼らからビックリされています。済ませられるところから済ませておこうと思っているだけで、叩き起こす気はなく、悪気はないのですが。よく働きます。土日も、少しゆっくりはしますが、基本的には何かしています。

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学生の意識 ~ 専攻科編 ~

 高専の卒業先進路には、「就職・大学編入・専攻科進学」という3パターンがあります。前者2つは分かりやすいですが、専攻科は馴染みがない人も多いかと思います。専攻科は、さらに2年間を高専を過ごすことで、より高度な学問を身につけ、最終的に大学学部卒業と同等の資格すなわち学士号を得ることができます。それに対して従来の5年生までは、「本科」と呼んで区別しています。

 おおよそ本科学生の上位3割は、とても優秀だと感心します。彼らの多くは進学希望ですが、どこの大学に編入させても大丈夫かと思います。その中には帰属意識が強くて、専攻科に進学する(残る)学生達もいます。どちらが良い選択肢かは、個人に依ります。なお現制度での専攻科の定員は、本科定員の1割と狭き門となっています。

 ただし高専生の優秀さというのは、強制された、ある意味人工的な優秀さです。高専の授業スケジュールと管理は厳しく、学生達は教員からの指示を日々こなすだけで大変です。このような仕組みはある一定のレベルを揃えるには適していますが、反面、自分で学び取っていくという力を奪いかねないという諸刃の剣です。

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学生の意識 ~ 本科編 ~

 昔から言われている高専特有の問題に、「中だるみ」というものがあります。従来の単学科制では、5年間という長い期間をほぼ同じメンバーで過ごすため、馴れ合いが生じます。学生間だけでなく、教職員との間でも。仲が良いという表現もできますが、一つ間違えば甘え合いであり、極めて狭い世界で堕落し合っていくということになってしまいます。

 「中高一貫校では、それよりも長い6年間ではないか?」という比較的疑問兼批判があります。しかし中高一貫校は大抵進学校であり、有名大学合格という明確な目標があります。有名大学受験は周知の通り過酷なものですから、中だるみは自身の命取りともなりかねますので、そのような心配はありません。

 それに引き換え、高専は明確な目標を立て難いです。求人倍率は当初より高いので、学生の中には、少々たるんでいても就職できるという甘えが生じる場合があります。高専には中学時代に相応の成績を取らねば入れませんから、学生達は本質的に素直で染まり易いです。ですから、一つの中だるみは大きな波及効果を生じ、学級崩壊になってしまう場合も残念ながらあります。

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一隅を照らしました

 移設した光電子制御プラズマCVD(PA-PECVD)装置2台のうち、「みずほ号」の光電子制御グロー放電(PAGD)が成功しました。移設後何かとトラブル続きでしたが、何とか灯りました。

 下の写真は、4インチn型(100)重ドープシリコンウェハー電極を8 x 8 mmに石英板で面積規制した上に灯ったPAGDです。中央のみが放電で光っているのが分かります。雰囲気は窒素(N2)ガスで圧力は130 Paです(※大気圧は、1013 hPa = 1013 x 102 Pa = 101300 Pa = 1.013 x 105 Pa = 101.3 kPa = 0.1 MPaです)。

 このようにPAGDは、「指定した場所」に放電を立てることができます。難しく言いますと、定量性が得られれます。放電開始電圧も「一定」にできますので、定性的でもあります。通常の放電プラズマでは、これらを定めるのは難しいです。PAGDは定性・定量が共にできるということで、微細構造成膜や反応解析を行うことができます。

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高桑・小川・篠原先生ご来校(その4/4)

 過酷な肉体労働をしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまいました。不慮のみずほ号再溶接作業が入ってしまい、かもめ号共々装置立ち上げは時間切れで完了できませんでした。再度の機会を覗います。

 それはともかく、先生方には遠路大牟田までお越し頂いたので、「料亭 一里」で歓迎会&打ち上げといたしました。こちらは大人だけですね。学生さん達は給料もらうようになってからということで。

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高桑・小川・篠原先生ご来校(その3/4)

 PA-PECVD装置1台(みずほ号)が真空を引けない状態になっていましたので、リーク(漏れ)箇所を一日かけて探し出しました。これを見つけ出すのって、結構しんどい作業なんです。

 最後に、接続溶接部にクラックが入っていることを学生さん(5E 塚嵜君)が発見し、Mコースの工場で再溶接していただくことになりました。東北大学からの輸送時に受けたダメージのようですが、塚嵜君はよく見つけ出したなぁと、皆で感心しました。

 装置を分解し(これも一苦労)、工場に運び入れました。ゴミが要らぬよう、各ポートはアルミホイルで塞ぎました。

 溶接しやすいように、Mコース技術職員の真島先生のご指導の下で、配置しました。真島先生には、昨年度の導波管作製に引き続き、今年度も続いてお世話になることになりました。今年度はご迷惑をおかけしないと思っていたのですがねー。

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