Author Archives: 鷹林 将

続・あれから10年

 前回の続きです。震災後しばらくの間は、みんなで電気通信研究所に集まっては、片付けや買い出しをしていました。週末などの空いた時間は、区役所に行ってボランティア活動をしていました。区役所は大勢のボランティアで溢れかえっていました。

 自宅の電気は比較的早く復旧しました。たまたま自宅にいて、コンセントに差しっぱなしだった掃除機が突然動き出してビックリしたものです。ガスもプロパンガスだったので、問題なく。被害は比較的軽い方で幸いでした。

 仙台の街を東に迂回するように、国道4号線バイパスが通っています。前回述べた東二番丁通りが旧4号線です。バイパスのすぐ東脇に、「浪分神社」という小さな神社があります。「江戸時代初期に起こった地震津波がここまで来たよ」という印として建てられたものだそうです。つまり、「子孫の皆さん、ここから東は危ないよ」ということです。

 しかしながら時は流れて、開発はいつの間にやら海岸線にまで達していました。

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あれから10年

 早いもので、2011年3月11日から10年経ちます。東日本大震災の日です。

 当時私は東北大学 電気通信研究所に博士研究員として勤務しており、当日は大阪大学 産業科学研究所の先生方を招いての共同研究会でした。私は大学院生達とともに聴講者の一人でした。午後からでしたが、学生が一人寝坊をしていたので、「早く来いよ~」と連絡していました。当時の光景は今でも覚えています。良い天気でした。

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経済と衰亡史

 読書の閉講期、長沼伸一郎氏の「現代経済学の直感的方法」を読破しました。氏の著書を知る人は多いと思いますが、特にこの本は抜けて面白く、夢中で読みました。特に最後の9章は歴史に残る白眉だと思います。

 いつの頃からか、生涯学習テーマの一つとして、「組織の衰亡」を志しました。人間は社会的動物である以上、必ず何らかの組織に属します。大きいところから、国家、職場 & 学校、地域、家族の順です。人生に貴族的余裕があれば、是非とも師を得て学びたいなぁと思うところです。

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翻訳と教科書

 先日、Feynmanさんの「Lecture on Physics」の原書を買いました。言わずと知れた物理学の名著です。

 「今更かよ?」と思うかもしれませんが、日本語訳は昔から持っています。とはいえ、どうにも訳に馴染めずに活用できていませんでした。この度、思い切って大人買いしました。

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有明元年と石炭

 有明に来て、あっという間に一年が過ぎました。一年前は、取引先企業との交渉団の一員として、静岡県の沼津を訪れていました。「ラブライブ! サンシャイン!!」の街です。大きな垂れ幕がありました。交渉が無事終わり海鮮丼に満足した帰路、三島駅の新幹線ホームから、「富士山はやっぱりキレイダナー」と、見とれていました。

 人生、変われば変わるものです。当時は品質管理のメンバーとして、不具合是正のために日々図面とにらめっこしつつ、社内他部署や協力会社とやりとりしていました。その一年後のここ数日は、どうもエンジンがかからず、ボーッと生きています。ちょっと今は充電サイクルなのかな。

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すぐに役立つことは幸せか?

 閉講中は乱読には打って付けです。天井知らずの読んでない本と読みかけの本を何とかしなければ。

 でも世の中、「すぐに役立つこと」を選んで効率的にやっていきたいと主張する人達が少なからずいます。他は無駄だと。そしてそれに便乗したり煽る形の関連書籍等が廃れることはありません。

 だって、みんな楽したいから。必要最低限の行動で、失業せずに安定して暮らしたいから。

 でも、「すぐに役立つこと」って、本当に恒久的な幸せをもたらしてくれるのでしょうか。考えてみましょう。

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歴史の多様性と教養

 開講期が瞬く間に過ぎ去り、春休みとなりました。だからといって教員の仕事が減るわけではありませんが、学生の皆さんはゆっくりできる時期と思います。

 この時期です。ちょっと専門から離れて、歴史からこれからを考えてみましょう。

 昔々高校の時、世界史の先生が仰せになったことを今でもはっきりと覚えています。「歴史は、中央集権と地方分権の繰り返しだ」と。

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研究をするということ

 有明高専では4年生後期から1年半の間、卒業研究を行います。研究とは、それまでに行っていた座学とも学生実験とも違うものです。そもそも、「研究」って何でしょうか? 考えてみましょう。

 私は博士であり、プロの研究者であります。そもそも、私がなぜこの道を志したのから始めましょう。

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手段と目的

 春も射程距離に入り、進学や就職の準備をし始める頃になりました。これらについてちょっと考えてみたいと思います。

 昔々の大学時代、あるお世話になった人によく言われました。「手段と目的を間違えるな」と。

 目的は、手段の無限の積み重ねを経て、最終的に得られるものです。目的というのは実は遠くにあるもので、現在地から見れば漠然とぼやけています。他方、手段は目前にあり、把握するのは簡単です。そう、手段を目的とするのは非常に簡単で、たやすい拠り所にできます。

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電気化学

 毎週、高専教員と地元企業の方々との交流を目的としたオンラインサロン会議が行われています。縁あって、ほぼ毎回参加させていただいております(※忙しいと、時々忘れます。ごめんなさい)。

 先週の回では、「電気化学(Electrochemistry)」の話が出ました。電気化学、そう、私の博士号取得分野です(※正確には、その中の「光電気化学(Photoelectrochemistry)」)。

 とはいっても、博士号を取ってからは、世の流れに身を任せて物理や電気にシフトしてきましたので、今や電気化学とは疎遠になっています。同窓会で話を聞くらいです。でも、当時の電気化学だけの知識力に、己の限界を感じていた(= 独立研究者として生きていけない)のもまた事実ですけどね。

 会議では、ふと企業の方から電気化学について問われることになりましたが、スイスイ答える自分がいました。まあ、そりゃ一応、博士ですからね・・・。川は涸れても、水源はまだ生きているようです。

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