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阿加先生

 ちょっと日付を遡りますが、1/16(月)に有明高専のグローバルエンジニア(Global Engineer)育成事業の一環として、東北大学大学院 工学研究科の阿加 賽見(あか さいけん)先生にご講演いただきました。本年度は国際交流室のメンバーとして、このGE講演の企画運営に携わっています。

 阿加先生は、私の東北大学時代(前の前の職場)の共同研究先の大学院生でして、現在は別研究室の助教をされています。今回そのご縁で、遠く有明高専までお越しいただきました。講演内容については、有明高専の公式HPにて報告しています。司会はもちろん、私ですね。

準備中です。右の私は学生の出欠を取っています。
スタートです。

 ご講演後は、近年の研究についてのDiscussionの他、校内をご案内しました。

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学年末試験

 明日1/31(火)から一週間、学年末試験です。担任をしている4Eでは、放課後教室に有志が残って勉強中です。

 高専は学年制です。基準成績をクリアして必要単位数を揃えていないと留年し、来年度その学年をイチからやり直しとなります。落とした科目だけではありません。基本的に「全部」やり直しです。

 たとえ必要最低限の単位を揃えて進級できたとしても、単位不足はその先の進学・就職活動にとって大きなペナルティーとなります。

 そのため学生さん達は皆必死です。

 一方、大学は単位制ですね。落とした科目だけ注力すれば良いです。そして所により制度が異なりますが、私のいたところでは4年生になる際、つまり研究室配属される際に進級の関門がありました。私は一年旅に出ましたけどね。

 そう考えると、高専は厳しいです。頑張りに感心します。頑張りに応えるためにも、試験の難度はそれなりにですかねー。

それは必死に勉強しています。

導波管(その2)

 前回上げた導波管の話の続きです。当該の6E授業で導波管の実習を行いました。測定は自作(卒研生と技術職員さん作の2つ)の可変ダミーロードを使って、長さを変えたときのLogMagの変化を見てもらいました。長さを得るために、同様に自作のストレート管を付け替えました。同軸変換器(下写真の灰色の信号入力部)は既製品です。測定はNanoVNAを用いてです。

 導波管理論は成熟したものですが、だからといって簡単に学べるものではありません。現在でも大電力通信には欠かせないものです。

導波管と実習セットです。右隅にNanoVNAが写っていまして、ノートPCで制御しています。
ストレート導波管を付け替えして、方形導波管の全長を変えています。
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卒研追い込み中!!

 目下5年生の卒研追い込み中です。

 発表資料や論文を書いていますと、足りないものが必ず出てきます。

 卒業研究は、論理的思考力を養う絶好の教科科目です。研究内容に目が行きがちですが、本質はそれの教育です。ですから卒業研究は「総まとめ科目」とも言い、一番取り組むべき科目です。

みずほ号の立ち上げ確認です。
卒業論文を書きながら、足りない実験をします。

お金がない!!

 年度末が近づいてきて、お金がないことに気づきました。公費予算システムっていうのは遅れて請求されるので、気がついたらなくなっていました。いや、私の執行計画が悪いだけなんですけどね・・・(ノД`)。

 なんでこんなにお金がなくなるかというと、理由は2つあります。1つは真空装置です。真空装置の各部品はどれも一万円札がたくさん要ります。学生さんに請求書を見せると、ビックリします。良いものは高くて当然ではありますが、もう少し安くならないものかと昔から思います。

 しかしながら、真空部品は取り扱いをきちんとしておければ、ずーっと使えます。つまり初期投資はとてもかかりますが、維持費はさほどでもないです。逆に化学では、機器はさほどでもないけど、消耗品となる薬品代が嵩みます。そう考えると、今年の立ち上げ期は仕方ないのかなと。

 2つめは、出張費です。地方にいるとどうしても出張交通費が嵩みます。会合は何かと東京などの都会で行われますので。その点からすると、都会の研究者ってイイナーと羨ましく思います。

 いや、私一人だけならば何とか賄えます。しかし教育の責務も負っている以上、学生さん達も同様に連れて行きます。そうすると、もちろん出張費は何倍にもなります。一方、特に大学の偉い先生方にいると思いますが、「勉強させてやるんだから自腹で付いて来て当然だ!!」という人達がいます。私は決してそちら側には付かないことをポリシーとしています。「育ちの経済的側面が向学の妨げになってはいけない」と思い、連れて回って見聞を深めさせています。広い世界を知ることはとても大切です。目前だけの世界に挫折したり、またその世界だけでの鳥なき島の蝙蝠ではいけません。特に高専は国立の高等教育機関ですから。

 ・・・などとカッコいいことを言っても、空からお金が降ってくるわけではありません。

 来年度はよく考えましょう。

導波管

 専攻科6Eの授業で導波管を教えています。3E(通年)&4E(前期)で電気磁気学を1年半、5Eで電子回路設計を半期教えていまして、その総まとめとして、導波管を用意しています。電気磁気学で電磁波を導き、電子回路設計でインピーダンスマッチングを実習させています。その両面を併せ持つのが、導波管です。

ネットワークアナライザと導波管。中3対象のオープンキャンパスでも展示しています。在校生からは引かれていますけど。

 電気磁気学(電磁気学)の面白さと醍醐味は、Maxwell方程式から電磁波を導けることから始まります。それらは授業カリキュラムでは4Eの後半で行っています。それまでの1年と少しの間はひたすら○△の法則ばかりの話です。これらを面白いという人は、世の中にまずいないでしょう。学生さん達には、「面白くないけど耐えて頑張ってね」と言っています。

 19世紀末のMaxwell方程式からの電磁波の予言とその実証により、電気工学は劇的に発展しました。無線通信ですね。量子力学はまだ産声を上げたかどうかの時期ですから、当時の研究者はMaxwell方程式の魅力に取り付かれたのでしょうね。分かります、その気持ち。しかし導波管の等価回路とか、また使用先の例であるマグネトロンとか、当時よくもまあこんなの考えたなあと関心します。シミュレーションやネットワークアナライザがあるわけでもないのによく開発できたなと。理論書も今読んでも分かりません。

 導波管の理論導出の授業資料をつくっていると、スライド50枚になりました。2日くらいかけてつくりました。一応授業1回分です。低学年の授業では1回につきスライドは大体15枚弱ですから、3倍の量になりますね。

 低学年では懇切丁寧に教えていますが、専攻科ともなれば、資料を渡して「勉強しておいてね」で良いと思います。丁寧に教えていたらとても時間が足りないし、丁寧すぎるとかえって自学習しなくなります。学齢に合わせて、段々と離していくべきかと。

 授業資料を作るのはかなりのプレッシャーですが、作ることで自分自身も理解が進みます。なるほどね、と。教うるは学ぶの半ばです。この仕事の醍醐味でもあります。

修業年限と教養

 人生長くやっていると、後悔することはたくさんあります。中でも最も選択を誤ったなと思うのは、中学受験をしなかったことです。

 中学受験をする先というのは、まず中高一貫進学校ですね。高校受験からそんな進学校に行き、それなりに有名な大学に入って、今は准教授という肩書きを得たのですから、中学受験をしていたとしてもゴールは結局同じだったかもしれません。

 しかし後悔するのはそういう受験的なことではなくて、教養を積む時間を失ったということです。大学受験からまだ程遠い中学3年間で、高校受験に囚われずに教養を積んだり(たとえば読書)、はたまたスポーツに勤しむ時間を失いました。これらの点では、今でも引け目を感じます。

 中学受験をしなかったのは、一人みんなと別れるのが寂しかったからというセンチメンタルな理由でした。けど小学校の卒業を迎えて、親しかった友人達が進学していくのを見て、とても後悔しました。

 さてさて、本題はそんな昔話ではありません。高等教育を目指す者にとって、学校の選択は修業年限が長いものが望ましいと思います。中高一貫校なら前半の3年間、高専なら2年間、大学も2年間程度は、進学や就職活動といった世俗なことに囚われず、好きなことやりたいことをじっくり深く掘り下げることができます。そんなゆったりとした時間、冒険であり修養である時間が、若い頃には絶対に必要です。テストは必要悪でしかありません。

 高専の初めの2年間はほぼ一般科の範疇ですので、専門課程所属の私にとってはほぼ縁がありません。高専のカリキュラムは厳しいのですが、学生の皆さんには教養を積んで欲しいなと思います。それだけの学力はあるので。専攻科も、研究半分教養半分といけば良いのですがね。専門バカは、やはりバカです。

 大学&大学院は結局10年間いました。けれど、教養を積むという点では不十分だったと思います。もっともそれは環境のせいではなくて、私の無知のせいだったのですが。無知はどこから来たのか? やはり中学の無為な時間だよなと。

 そんな訳でこんな歳になっても、教養、すなわち真の知を追い求めます。

特例適用専攻科の学修総まとめ科目担当教員になりました

 高専では、学校教育法第10章第119条に基づいて、本科5年の上に修業年限2年の専攻科を設置しています。大学評価・学位授与機構による審査を受けることにより、専攻科の学生さん達に大学と同じ学士号を授与することができます。

 さらに有明高専は「特例適用専攻科」に認定されていますので、所属教員は上記機構に個別に評価を得ることにより、特別研究すなわち専攻科での研究活動の指導教員になることができます。我が研究室も3期生を迎えて軌道に乗ってきまして、この度その「学修総まとめ科目担当教員」になりました(俗に「適」と呼ばれるようです)。研究課題名は、

「アモルファス炭素材料の電気電子材料応用に関する研究」

です。

 これには相応の研究業績が要るようです。しかしながら前職5年間は企業にいましたので、研究活動はできませんでした。当然ですね。他方で前々職東北大学時代に得たデータは山積しておりました。幸いにも、社長のご理解や周囲の先生方のサポートにより、継続して論文を出していくことができました。

 「適」教員になれたことは偏に、これら皆様のおかげです。この場を借りて厚く御礼申し上げる次第です。

科挙と朱子学とテスト

 学生の皆さんには常日頃、「研究 > 実験 > 座学」の順に重視するように言っています。と言いますのも、世の中で必要とされるのは、「如何に社会に価値を提供できるか?」、言い換えれば「如何にアウトプットできるか?」であって、テストの点数ではないからです。図書館だよりにも詳しく書きましたけど。

 一方で「必要悪」として、テストの成績で席次を決めて諸事を判断しています。決してBestな制度ではありませんが、Betterな制度とせざるを得ません。中等からシームレスな高等教育機関運営の悩みどころです。特に近年はこれが重視されていて、何でも点数で評価する風潮で、懸念を覚えます。点数評価は一見偏りなく平等ですが、無責任でもあります。

 有明高専では、4年次後半から卒業研究が始まります。正に冒頭の訓練です。しかしここで、必要悪が生み出してしまう一番駄目なパターンを懸念します。

 それは、「テストの点数が良いから私は優れている」と思い込んでいる、勘違いさんです。よりはるかに大切な研究や実験はなおざりで、とにかく丸暗記でテスト重視です。数字がハッキリ出て分かりやすいからですからね。思考回路は単純です。

 でもそういう人って、世の中で「最も使えない人」です。アウトプットができない上に、やたらプライドだけは高い。企業にとっては、いや大学など研究機関でも、「最も要らない人」です。

 そんな人はたとえば、何かをするために大学/大学院に入るのではなく、大学/大学院に入ったこと自体に満足する人です。そんなイキリはグローバルな世の中では全く通用しないのに、そういう道を歩みたがる人が絶えることはありません。一体どこ情報??

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ISIE2022

 12/20(火)と21(水)の2日間、ISIE2022 (International Symposium on Innovative Engineering 2022)という国際シンポジウムに参加しました。有明高専からは学生3名が発表し、内2名は当研究室の5E学生でした。これは、九州・沖縄地区(第5ブロック)の9つの高専(北九州・久留米・佐世保・熊本・大分・鹿児島・都城・沖縄・有明)とマレーシアのペトロナス工科大学(Universiti Teknologi PETRONAS, UTP)との間で毎年共同開催されている学生向け国際シンポジウムです。

 本年は北九州高専が主管でしたが、コロナ下のためオンラインで開催しました。学内会議室に配信セットを用意しました。いわゆる女優ライトも用意し、万全の体制で臨みました。

まずは福田君です。丸い女優ライトが光っていますね。写っていないところに鷹林他、担当教職員が控えていました。もっとも撮影者自身が鷹林ですけどね。
続いて、古賀君です。

 まだ5年生には英語での発表は重荷かもしれません。しかし色々チャレンジしていくことで、世の中の広さを知り、自分自身への課題を把握してもらい、今後の飛躍の糧にしてもらえればと思います。経験に損はありません。「若い時の苦労は買ってでもせよ」というやつですね。

電気磁気学II Advanced

 着任してから毎年、後期中間試験を終えて冬休みを跨ぐこの時期に「電気磁気学II Advanced」という補講をしています。正式な単位科目ではなくて、ボランティアでやっています。

 正規授業「電気磁気学I」と「電気磁気学II」では、最終的にMaxwell方程式の応用として、表皮効果と電磁波まで行っています。4年生でそこまで・・・という意見もあるかもしれません。しかし高周波回路設計をする上で、表皮効果は必要不可欠です。否、交流大電流を流す上でもその知識は要りますよね。教え子達が就職して、無知を叩かれるのは忍びないので、表皮効果を教えることを目標に授業計画を立てたら、ついでに電磁波までやっちゃいました。

 しかしながら電磁気学という学問全体を考えた場合、やはり特殊相対性理論まで行って完結かなと思います。なぜなら、相対論を考慮しないと、Maxwell方程式からローレンツ力が導出できないからです。Maxwell方程式から導けないものが残るなんて、何か落ち着かないですよね。

 というわけで、そこを補うためにこの補講を行っています。希望者のみの参加にして、かゆいところに手が届くスケールで行っています。

 そもそも、学問というものはこうあるべきだと思います。強いられて行うのではなく、自ら知りたい・学びたいという気持ちが大切です。高専の厳しいカリキュラムではそれを見失いがちです。何のために学ぶのか?

 伸びたい気持ちのある学生達に、自分の手の届く範囲で、伸びる方法を教えています。まあ、年の功っていうやつですかね。

スピン角運動量 in コロナワクチン

 昨日11/22(火)にコロナワクチンの4回目を接種しました。翌日の本日は祝日なので、昨日接種した方が業務に支障は無いかなと判断しました。一日経ちましたが、さほど変わりなくです。

 先日ふと、スピン(スピン角運動量)に関するブルーバックスが目に留まり、ただいま読んでいます。と言いますのも、授業でGMR (Giant Magneto Resistive effect、巨大磁気抵抗効果)、TMR (Tunnel Magneto Resistance Effect、トンネル磁気抵抗効果)やスピントランジスタなどのスピントロニクスの概略を教えておりまして、そこではスピンの説明が必要です。スピントロニクスは、現代の電子工学では無視できないんですよね。

 でも授業は前期でそれとなく済ませたはものの、スピンってどうやったら分かりやすく教えられるのだろうかと、後期の今でも少々悩んでおります。現本科教育課程では量子力学をやっていないし、かといって量子力学を行ったとしても、少々深い話になってくるし。う~ん・・・。

 ランダウさんによると、軌道角運動量を公転、スピンを自転に例えるのは宜しくないらしく。

 う~ん。ワクチン打ったばかりですが、何となく頭から離れず。